介護職を辞めたいとき|「介護が無理」か「今の職場が無理」かを見分ける方法
介護職を辞めたいと思ったとき、「自分は介護に向いていないのではないか」「次の職場へ行っても、結局同じなのではないか」「もう少し我慢した方がいいのではないか」と迷うことがあります。
ただ、「辞めたい」という気持ちだけで、介護そのものが自分に合っていないとは決められません。
介護の仕事自体に負担を感じている場合もあれば、人間関係や職場の運営、勤務条件が重なって、今の職場で働き続けることがつらくなっている場合もあります。かなり疲れていると、何が嫌なのかを考えることさえ難しくなるかもしれません。
この記事では、「介護そのもの」「今の職場」「今の自分の状態」の三つに分けて、辞めたい気持ちの背景を見ていきます。
何が負担になっているのかが少し見えてくると、今の職場で調整するのか、働く場所を変えるのか、介護以外の道も探すのか、次に考えることも変わってきます。
今の状況をもう少し詳しく考えたい方へ
三つに分けたあと、残る・異動する・転職するなどの方向を自分の場合に当てはめ、次に何をするか考えるための4つのワークをこちらのnoteにまとめています。
「辞めたい」だけで介護に向いていないとは決められない
仕事を辞めたいと思うと、「つまり、自分は介護に向いていないのだ」と考えてしまうことがあります。
でも、実際の気持ちはもっと複雑です。
介護そのものは嫌いではない。利用者さんと関わることには意味を感じている。
それでも、特定の人との関係がつらい。職場の運営に納得できず、勤務条件も生活に合わない。職員の利用者さんへの言葉遣いや接し方にも違和感がある。
こうした問題がいくつも重なって、「もうここでは続けられない」と感じることがあります。

介護は嫌いじゃないのに、今の職場を辞めたい。これって矛盾しているのかな。
「介護という仕事を続けたいか」と「今の職場で働き続けたいか」は、別々に考えられます。
令和7年度の介護労働実態調査では、「今の仕事(職種)を続けたい」と答えた人は55.9%、「現在の事業所で働き続けたい」と答えた人は51.9%でした。
それぞれ回答した人の数も異なるため、この差から個々の事情は読み取れません。ただ、調査でも、仕事そのものを続けたいかと今の事業所で働き続けたいかは、別の質問として尋ねられています。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」
私自身も、一つの職場ですべてが起きたわけではありませんが、人間関係、運営や体制、勤務条件など、複数の不満が重なった経験があります。利用者さんへの接遇や言葉遣いを見て、「自分が大切にしたい介護とは違う」と感じたこともありました。
これは、介護という仕事そのものが嫌になったこととは少し違います。
一方で、辞めたい理由がいくつあっても、利用者さんとの関係などを思うと「それでも残りたい」と迷うこともあります。
だから、一つの出来事だけを見て「この問題があるから転職する」「まだ好きな部分があるから残る」と決めるのではなく、何が起きているのかを分けてみます。
「介護そのもの」「今の職場」「今の状態」に分ける
辞めたい理由は、次の三つの視点から見ていきます。

1.介護そのものに感じている負担
まず見るのは、職場が変わっても残りそうな負担です。
たとえば、
- 介助そのものを続けることがつらい
- 利用者さんと関わる仕事自体から離れたい
- 介護という仕事を今後も続けたいと思えない
- 別の職場を想像しても、介護を続けたい気持ちが出てこない
といったものです。
こうした気持ちが強いのであれば、今の職場だけでなく、介護という仕事そのものを見直すことも選択肢になります。
ただ、夜勤や身体的な介助がつらい場合も、それが介護という仕事そのものへの負担なのか、今の勤務時間や人員配置、業務の分担による負担なのかは、分けて考えてみます。また、今の職場で疲れ切っていると、職場へのつらさと介護そのものへの気持ちを分けにくくなることもあります。
この段階で「自分は介護に向いていない」と決めつけなくても大丈夫です。
2.今の職場に感じている負担
次は、今いる職場だから起きている問題です。
たとえば、
- 特定の職員との人間関係
- 上司や管理者の対応
- 職場の運営や方針
- 人員配置や業務の回し方
- 勤務時間やシフトなどの条件
- 指示やルールが人によって違う
- 利用者さんへの接遇や言葉遣い
- 自分が大切にしたい介護と職場の考え方が合わない
などです。
こうした負担が大きいのであれば、「介護が嫌」なのではなく、「この環境で介護を続けることがつらい」のかもしれません。
ただし、すべてを職場との相性で片づけるのも違います。
暴力や人格を傷つける言動、安全を損なう扱いまで、「自分と合わないだけ」「気にし過ぎているだけ」で済ませるものではありません。
人間関係だけでなく、「この職場で、自分が納得できる形で働き続けられそうか」という視点も持っておきたいところです。
人間関係が理由で退職を考えている場合は、「介護職は人間関係だけで辞めてもいい?退職を考える5つの条件」で、判断材料をもう少し詳しく扱っています。
3.今の自分は判断できる状態か
もう一つ見ておきたいのが、今の自分の状態です。
これは介護や職場と同じ種類の退職理由ではなく、これからのことを考える余裕が、今どのくらい残っているかを見るための視点です。
たとえば、
- 仕事のことを考えるだけでもかなり疲れる
- 仕事が終わっても考え続けてしまう
- 以前より余裕がなくなっている
- 今までなら流せていたことまで苦しく感じる
- 残るか辞めるかを考えること自体がつらい
そんなときは、無理に結論を急がなくてもよいと思います。
仕事による心の負担について相談先を探す場合は、厚生労働省の「こころの耳|働く方へ」にも案内があります。
私自身は、複数の不満が重なり、「自分が耐えられるラインを超えている」と感じたときに、転職を現実的な選択肢として考えてきました。
そのラインは人によって違います。誰かが同じ職場で働き続けられているからといって、自分も同じところまで耐えなければならないわけではありません。
判断するときは「何が変われば続けられそうか」を考える
三つに分けたら、次は「何が変わったら、もう少し働き続けたいと思えるだろう」と問いかけてみます。
たとえば、
- 特定の人との関係が変われば続けたい
- 勤務条件が変われば働けそう
- 別の部署や事業所なら介護を続けたい
- 管理者が問題に対応してくれるなら残りたい
- 今の職場は離れたいが、介護そのものは続けたい
そう思えるのであれば、介護の仕事内容だけでなく、今いる環境の影響も大きいのかもしれません。
もし職場に相談したことがあるなら、相談したあとに職場がどう動いたかも判断材料になります。
話を聞いて終わったのか。必要な事実確認や調整が行われたのか。同じ問題を減らすために、ルールや対応を見直す動きがあったのか。
職場が具体的に動いているかを見ることで、「ここで働き続けるために、まだ変えられることがあるか」が少し分かってきます。
これから相談を考えている方は、「介護職の人間関係を相談するとき|相談相手・伝え方・最初の順番」で、誰に何を伝えるかをまとめています。
反対に、職場が変わったとしても介護を続けたいと思えないのであれば、仕事そのものを見直すこともできます。
もちろん、きれいにどちらかへ分かれるとは限りません。
人間関係もつらい。勤務条件にも不満がある。介護そのものにも疲れてきた。今は考える余裕もない。
いくつもの理由が重なっていても、無理に原因を一つへ絞らず、そのまま並べておきます。
まずは、何が一番大きな負担になっていて、何が変われば少し楽になりそうか。 そこから探してみます。
「それでも残りたい理由」も一緒に見る
辞めたい理由が多くても、「それでも辞めたくない」と思うことがあります。
- 利用者さんとの関係がある
- 好きな仕事もある
- 一緒に働きたい職員もいる
- 今まで積み重ねてきたものもある
- 慣れた環境を離れることが不安
私自身も、サービスを利用してくれている利用者さんのことを考えて、「この人たちがいるのに、自分が辞めてもいいのだろうか」と迷ったことがありました。
こうした気持ちを、無理に消す必要はありません。
「辞めたい理由」と「それでも残りたい理由」の両方を見ることも、判断材料になります。
ただ、残りたい理由があるからといって、それだけで残ることが決まるわけでもありません。
たとえば、利用者さんとの関係を大切にしたいのであれば、その大切なものは、この職場に残り続けなければ守れないものなのか。 そこまで見てみます。
何が嫌なのかだけでなく、何を失いたくなくて迷っているのか。そこまで見ると、今の職場に残ることと、介護を続けることを少し分けて考えられるかもしれません。
「どこも一緒」という言葉だけで判断を止めない
私が初めての介護現場で転職を考えたとき、他のスタッフに相談したことがあります。そのとき言われたのが、「どこへ行っても一緒だよ」という言葉でした。
当時は一つ目の職場しか知らなかったため、「介護現場は、どこへ行ってもこういうものなのかもしれない」と思いました。
しかし、その後実際に転職して複数の職場を経験すると、人間関係、運営、勤務条件、介護について大切にしていることは、職場によって違うと感じました。
もちろん、どの職場にも何らかの大変さはあります。それでも、すべての職場が同じとは限りません。
「どこも一緒」「もう少し続けた方がいい」「3年くらいはいた方がいい」といった周囲の意見も、判断材料の一つにはなります。
ただ、その言葉だけで決めるのではなく、今の職場で何が起きていて、それがほかの職場でも同じように起きることなのかを考えてみたいところです。
「転職は逃げなのか」「3年は続けるべきなのか」と迷っている場合は、「介護職の転職は逃げ?『どこも一緒』『3年は続けるべき』に迷ったときの考え方」でも扱っています。
最後に見たいのは、何に苦しんでいて、それが今いる場所で変えられそうなのか、ということです。
変えたい対象から、次の一手を考える

何が負担になっているかが見えてくると、次に取れる動きも変わります。
| 今の状況 | 考えられる次の一手 |
|---|---|
| 今の職場で変えられそうなことがある | 職場へ相談する |
| 部署や事業所が変われば続けられそう | 異動を考える |
| 介護は続けたいが、今の職場では難しい | 介護職として転職を考える |
| 介護という仕事自体から離れたい気持ちがある | 介護以外の仕事も調べる |
| 疲れていて、考えること自体がつらい | まず休むことを考える |
ここにあるのは、どれか一つに当てはめるための診断ではありません。
疲れているけれど介護以外の仕事も気になる、というように、いくつかが重なることもあります。上から順番に全部試すものでもありません。
今の職場に残りたいなら、何を変えてほしいのかを伝えることも一つの方法です。
ただ、何度も自分の伝え方だけを見直し続ければよいわけではありません。相談後に職場側がどう動いたかも含めて見ていきます。
異動と転職のどちらが合うか迷う場合は、「介護職の異動と転職、どちらを選ぶ?変えたいものから考える判断基準」で、それぞれ何を変えられるかを比べています。
介護職として別の職場へ移ると決めた方は、「介護職が転職すると決めたあと、何から始める?活動前に整理したいこと」から、次の職場で変えたい条件を考えられます。
すでに候補施設を見ている場合は、「人間関係のよい介護施設を見分けるには|求人・見学で見る職場の土台」も参考になります。
介護そのものを離れる方向が気になっていても、すぐに異業種へ転職すると決める必要はありません。「介護以外に自分ができる仕事がない」と不安で動けないときは、「介護職を辞めたいけど、他にできる仕事がないと思ったときの整理」で、仕事を探す前の考え方を扱っています。
まず三つに分けて書いてみる
ここまで読んでも、辞めるか残るか、まだ決められないかもしれません。
そんなときは、紙やスマホのメモに、
- 「介護そのもの」
- 「今の職場」
- 「今の自分の状態」
と三つ書いて、今感じていることを振り分けてみてください。
一つの悩みが二つにまたがっても構いません。どこに入るか分からないものは、無理に分類せず、そのまま書き残しておいてもよいと思います。
余裕があれば、「それでも残りたい理由」も横に書きます。
そして、書いたものを眺めながら、「この中で、一つ変わるとしたら、何が一番楽になるだろう」と考えてみます。
特定の人との関係なのか。勤務条件なのか。職場そのものなのか。介護という仕事なのか。それとも、今はまず休むことなのか。
すぐに答えが出なくても、何に負担を感じているかを書くだけで、今まで一緒になっていた悩みが少し分かれて見えることもあります。
「介護が無理なのか」「今の職場が無理なのか」は、我慢できた期間や、周囲から何と言われたかだけでは決まりません。
まず三つに分けて書き、一番変えたいものを探してみる。
そこから、今の自分に合う次の一手を考えられれば十分です。
ここからもう少し具体的に考えたい方へ
三つに分けてみても、「職場へ相談するか」「異動するか」「介護職のまま転職するか」「介護以外も調べるか」で迷うことはあります。
そうしたときに、今の状況をまとめて考えられるよう、noteに4つのワークを用意しました。
何がつらいのか、何を自分で変えられそうか、職場に対応してほしいことは何かを見たうえで、最後に次の14日で何をしてみるか、いつ見直すか、どんな状態なら次の選択肢を考えるかまで書き出せる内容です。
14日は我慢や改善待ちの期限ではありません。「辞める・残る」を今すぐ決めるためではなく、次に何をするかを少しずつ考えたいときに使ってください。
