介護職を辞めたいとき|「介護が無理」か「今の職場が無理」かを見分ける方法
介護職を辞めたいと思ったとき、
「自分は介護に向いていないのではないか」
「次の職場へ行っても、結局同じなのではないか」
「もう少し我慢した方がいいのではないか」
と迷うことがあります。
ただ、「辞めたい」という気持ちだけで、介護そのものが自分に合っていないとは決められません。
介護という仕事そのものへの負担もあれば、人間関係、職場の運営、勤務条件などが重なって、今の職場にいることがつらくなっている場合もあります。
また、かなり疲れていると、何が嫌なのかを整理すること自体が難しくなることもあります。
だから、辞めるか残るかをすぐに決める前に、まずは
「介護そのもの」
「今の職場」
「今の自分の状態」
の三つに分けて考えてみます。
大切なのは、「辞めたい=介護に向いていない」と一つの結論にしないことです。
何が自分を苦しくさせているのかを分けると、今の職場で調整するのか、働く場所を変えるのか、介護そのものを見直すのかなど、次に考えることも見えやすくなります。
「辞めたい」だけで介護に向いていないとは決められない
仕事を辞めたいと思うと、
「つまり、自分は介護に向いていないのだ」
と考えてしまうことがあります。
でも、実際の気持ちはもっと複雑です。
介護そのものは嫌いではない。
利用者さんと関わることには意味を感じている。
それでも、特定の人との関係がつらい。
職場の運営に納得できない。
勤務条件が生活に合わない。
職員の利用者さんへの言葉遣いや接し方に違和感がある。
こうした問題がいくつも重なり、「もうここでは続けられない」と感じることがあります。
「介護という仕事を続けたいか」と「今の職場で働き続けたいか」は、分けて考えることができます。
令和7年度の介護労働実態調査では、「今の仕事(職種)を続けたい」と答えた人は55.9%、「現在の事業所で働き続けたい」と答えた人は51.9%でした。
数字の差だけで一人ひとりの事情までは分かりませんが、調査でも「仕事を続けたいか」と「今の事業所で働き続けたいか」は別の項目として確認されています。
介護という仕事への気持ちと、今いる職場への気持ちは、分けて整理してよいものです。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」
私自身も、一つの職場ですべてが起きたわけではありませんが、人間関係、運営や体制、勤務条件など、複数の不満が重なった経験があります。
利用者さんへの接遇や言葉遣いを見て、
「自分が大切にしたい介護とは違う」
と感じたこともありました。
これは、介護という仕事そのものが嫌になったこととは少し違います。
一方で、辞めたい理由がいくつあっても、利用者さんとの関係などを考えて「それでも残りたい」と迷うこともあります。
だから、一つの出来事だけを見て、
「この問題があるから転職する」
「まだ好きな部分があるから残る」
と決めるのではなく、まず何が起きているのかを分けてみます。
「介護そのもの」「今の職場」「今の状態」に分ける
辞めたい理由を整理するときは、三つの枠で考えてみます。
1.介護そのものに感じている負担
まず見るのは、職場が変わっても残りそうな負担です。
たとえば、
- 介助そのものを続けることがつらい
- 利用者さんと関わる仕事自体から離れたい
- 介護という仕事を今後も続けたいと思えない
- 別の職場を想像しても、介護を続けたい気持ちが出てこない
といったものです。
こうした気持ちが強いのであれば、「今の職場」だけではなく、介護という仕事そのものについて考える必要があるかもしれません。
ただし、今の職場でかなり疲れていると、職場へのつらさと介護そのものへの気持ちを分けにくくなることもあります。
この段階で、
「自分は介護に向いていない」
と断定する必要はありません。
2.今の職場に感じている負担
次は、今いる職場だから起きている問題です。
たとえば、
- 特定の職員との人間関係
- 上司や管理者の対応
- 職場の運営や方針
- 人員配置や業務の回し方
- 勤務時間やシフトなどの条件
- 指示やルールが人によって違う
- 利用者さんへの接遇や言葉遣い
- 自分が大切にしたい介護と職場の考え方が合わない
などです。
こうした部分への負担が大きいのであれば、
「介護が嫌」なのではなく、「この環境で介護を続けることがつらい」
のかもしれません。
ただし、すべてを「この職場と自分の相性」でまとめる必要もありません。
暴力や人格を傷つける言動、安全を損なうような扱いなど、問題として確認すべきことまで、
「自分と合わないだけ」
「自分が気にし過ぎているだけ」
と処理しないことも大切です。
人間関係だけではなく、
「この職場で、自分が納得できる形で働き続けられそうか」
という視点で見てみます。
3.今の自分は判断できる状態か
もう一つ確認しておきたいのが、現在の自分の状態です。
これは「介護」や「職場」と同じ種類の退職理由というより、今の自分に、これからのことを考える余裕が残っているかを見るための確認です。
たとえば、
- 仕事のことを考えるだけでもかなり疲れる
- 仕事が終わっても考え続けてしまう
- 以前より余裕がなくなっている
- 今までなら流せていたことまで苦しく感じる
- 残るか辞めるかを考えること自体がつらい
という状態なら、結論を急ぐ前に「今は判断できるだけの余裕があるか」も考えます。
私自身は、複数の不満が重なり、
「自分が耐えられるラインを超えている」
と感じたときに、転職を現実的な選択肢として考えてきました。
そのラインは人によって違います。
誰かが同じ職場で働き続けられているからといって、自分も同じところまで耐えなければならないわけではありません。
判断するときは「何が変われば続けられそうか」を考える
三つに分けたら、次に考えたいのは、
「何が変わったら、もう少し働き続けたいと思えるだろう」
ということです。
たとえば、
- 特定の人との関係が変われば続けたい
- 勤務条件が変われば働けそう
- 別の部署や事業所なら介護を続けたい
- 管理者が問題に対応してくれるなら残りたい
- 今の職場は離れたいが、介護そのものは続けたい
と思えるのであれば、介護そのものより、今いる環境の影響が大きい可能性があります。
もしすでに職場へ相談したことがあるなら、相談したあとに職場がどう動いたかも判断材料になります。
話を聞いて終わったのか。
必要な事実確認や調整が行われたのか。
同じ問題を減らすために、ルールや対応を見直す動きがあったのか。
相談後の組織の反応を見ると、
「この職場の中で、まだ変えられる余地がありそうか」
も少し見えやすくなります。
反対に、職場が変わることを想像しても介護を続けたいと思えないのであれば、仕事内容そのものについて考え直す必要があるかもしれません。
もちろん、きれいにどちらか一方へ分かれるとは限りません。
人間関係もつらい。
勤務条件にも不満がある。
介護そのものにも疲れてきた。
自分自身にも余裕がない。
そうやって複数が重なることもあります。
無理に原因を一つに決める必要はありません。
見るのは、
今の自分にとって、何が一番大きな負担になっているのか。
そして、
何が変われば、今より働きやすくなりそうなのか。
ということです。
「それでも残りたい理由」も一緒に見る
辞めたい理由が多くても、
「それでも辞めたくない」
と思うことがあります。
- 利用者さんとの関係がある。
- 好きな仕事もある。
- 一緒に働きたい職員もいる。
- 今まで積み重ねてきたものもある。
- 慣れた環境を離れることが不安。
私自身も、サービスを利用してくれている利用者さんのことを考えて、
「この人たちがいるのに、自分が辞めてもいいのだろうか」
と迷ったことがありました。
こうした気持ちを、無理に消す必要はありません。
「辞めたい理由」と「それでも残りたい理由」の両方を見ることも、判断材料になります。
ただ、残りたい理由があるからといって、それだけで残ると決める必要もありません。
たとえば「利用者さんとの関係を大切にしたい」と思うなら、
その大切なものは、この職場に残り続けなければ守れないものなのか
まで考えてみます。
何を嫌なのかだけではなく、何を失いたくなくて迷っているのかまで分かると、自分が本当に変えたいものが見えやすくなります。
「どこも一緒」という言葉だけで判断を止めない
私が初めての介護現場で転職を考えたとき、他のスタッフに相談したことがあります。
そのとき言われたのが、
「どこへ行っても一緒だよ」
という言葉でした。
当時は一つ目の職場しか知らなかったため、
「介護現場は、どこへ行ってもこういうものなのかもしれない」
と思いました。
しかし、その後実際に転職して複数の職場を経験すると、人間関係、運営、勤務条件、介護について大切にしていることは、職場によって違うと感じました。
もちろん、どの職場にも何らかの大変さはあります。
それでも、すべての職場が同じとは限りません。
「どこも一緒」
「もう少し続けた方がいい」
「3年くらいはいた方がいい」
といった周囲の意見も、判断材料の一つにはなります。
ただ、それだけを理由に自分の判断を止める必要はありません。
「転職は逃げなのか」「3年は続けるべきなのか」と周囲の言葉で迷っている場合は、「介護職の転職は逃げ?『どこも一緒』『3年は続けるべき』に迷ったときの考え方」で、自分の状況に置き換えて考える方法を整理しています。
最終的に見るのは、
自分が何に苦しんでいて、それは今いる場所で変えられそうなのか
ということです。
変えたい対象から、次の一手を考える
辞めたい理由が整理できると、次に考えることも変わります。
| 今の状態 | 次の一手 |
|---|---|
| 今の職場の中で調整できそう | 相談する |
| 働く場所が変われば続けられそう | 異動を考える |
| 今の職場では変わりにくく、介護は続けたい | 転職を考える |
| 疲れていて判断すること自体が難しい | まず休むことを考える |
「辞めるのは逃げだから残る」
「つらいから、すぐ転職する」
の二択にする必要はありません。
まず見るのは、
何を変えたいのか。
それは今いる場所で変えられそうなのか。
です。
自分の伝え方や動き方を見直す余地があるなら、それを試すことにも意味があります。
ただ、何度も自分の伝え方だけを直し続ければよいわけではありません。
相談や確認をしたあと、職場側にも問題を変えようとする動きがあるかを含めて判断します。
人間関係を理由に辞めるか迷っている場合は、「介護職は人間関係だけで辞めてもいい?退職を考える5つの条件」で判断材料を整理しています。
今の職場でまず相談してみたい場合は、「介護職の人間関係を相談するとき|相談相手・伝え方・最初の順番」を参考にしてください。
異動と転職のどちらを選ぶか迷う場合は、「介護職の異動と転職、どちらを選ぶ?変えたいものから考える判断基準」で、自分が変えたいものから選択肢を整理しています。
転職を考え始めていて、次の職場で同じことを繰り返したくない場合は、「人間関係のよい介護施設を見分けるには|求人・見学で見る職場の土台」で、入職前に確認できるポイントを整理しています。
まず三つに分けて書いてみる
今すぐ、辞めるか残るかを決める必要はありません。
まず紙やスマホのメモに、
- 「介護そのもの」
- 「今の職場」
- 「今の自分の状態」
と三つ書いてみてください。
そこへ、今感じていることを振り分けます。
一つの悩みが二つにまたがっていても構いません。
余裕があれば、「それでも残りたい理由」も横に書きます。
「この中で、一つ変わるとしたら、何が一番楽になるだろう」
- 特定の人との関係なのか。
- 勤務条件なのか。
- 職場そのものなのか。
- 介護という仕事なのか。
- それとも、今はまず自分の状態なのか。
その答えが、次に何を変えるかを考える最初の材料になります。
「介護が無理なのか」「今の職場が無理なのか」は、我慢できた期間や、周囲から何と言われたかだけでは決まりません。
まず、
介護そのもの、今の職場、今の自分の状態に分けて書く。
そして、一番変えたいものを一つ見つける。
辞めるか残るかを決めるのは、そのあとでも構いません。
