介護職のストレスが限界になる前に|原因を切り分け、次の対処を選ぶ方法
「介護の仕事がしんどい」
そう感じていても、何が一番つらいのか、自分でもよく分からないことがあります。
人間関係がしんどいのか。
人手不足で仕事量が多すぎるのか。
利用者さんへの対応で疲れているのか。
それとも、自分の中で「こうするべき」と背負いすぎているのか。
いくつもの負担が重なると、全部まとめて「介護の仕事がつらい」に見えてしまいます。
すると、
「とにかく休んだ方がいいのかな」
「自分がもっと強くならないといけないのかな」
「もう転職するしかないのかな」
と、次に何をすればいいのかも分からなくなります。
そんなとき、いきなり大きな答えを出す必要はありません。
まず考えたいのは、「今、自分は何が一番嫌なのか」です。
この記事では、介護職のストレスを大きく4つに分けながら、原因に合わせて、休む・自分で整える・相談する・職場環境を見直すのうち、次にどこへ進めばいいのかを整理します。
介護職のストレスは、全部同じ原因から生まれるわけではない
介護職のストレスについて調べると、人間関係、人手不足、身体的な負担、利用者対応など、さまざまな原因が出てきます。
実際、令和7年度の介護労働実態調査でも、仕事上の悩み・不安・不満として「人手が足りない」が52.3%、「仕事内容のわりに賃金が低い」が38.1%、「身体的負担が大きい」が23.9%など、複数の負担が挙げられています。
だからこそ、「介護職はストレスが多い」でまとめてしまうと、自分が何に困っているのかが見えにくくなります。
私自身も、ずっと同じ理由で仕事をつらいと感じていたわけではありません。
新人の頃は、覚えることの多さや介護技術を身につけることの大変さが大きかったと思います。
分からないことも多い。
一つひとつの介助にも時間がかかる。
周りについていくだけでも必死になる。
この頃は、純粋に「仕事を覚えること」の負担が大きかったです。
ところが、通常業務をある程度こなせるようになってくると、つらさの中身が変わってきました。
仕事量そのものよりも、
- 人間関係
- 職場の体制
- なかなか変わらない待遇
といった部分の方が、気になるようになっていきました。
同じ「仕事がしんどい」でも、原因はそのときによって違います。
だから、対処法を探す前に、何が自分を削っているのかを一度分けてみることが大切です。
まずは4つに分けて「何に削られているのか」を見る
ここでは、介護職のストレスを大きく4つに分けてみます。
きれいに一つへ分類する必要はありません。
むしろ、
「人間関係もあるし、人手不足もある」
「利用者対応が大変だけど、職場のフォローがないこともつらい」
というように、複数の原因が重なっている方が自然です。
大事なのは、その中でも「今、一番大きいものは何か」を探すことです。
1.人間関係が一番つらい
たとえば、
- 先輩の機嫌をいつも気にしている
- 上司へ質問しづらい
- 特定の職員と勤務が重なるだけで憂うつになる
- 暗黙のルールに合わせ続けている
- 言い方や態度に毎回削られる
といった場合です。
介護の仕事そのものはできているのに、「誰と働くか」「どんな空気の中で働くか」が大きな負担になっていることがあります。
私自身も、経験を積むほど、こちらの比重が大きくなっていきました。
ここで重要なのは、「介護職が向いていない」とすぐに結論づけないことです。
仕事内容ではなく人間関係が中心なら、まず考えるべきことも変わります。
2.仕事量や職場の体制が一番つらい
人手不足、業務量、勤務体制、職場のルール、待遇などが負担になっていることもあります。
たとえば、
- 「自分が頑張っても仕事が減らない」
- 「いつも人が足りず、余裕がない」
- 「相談しても体制が変わらない」
- 「求められることは増えるのに、待遇は変わらない」
と感じている場合です。
こうした問題を、すべて「自分のストレス耐性」の問題にしてしまうと苦しくなります。
もちろん、自分で工夫できることもあります。
しかし、個人が頑張るだけでは変えられない問題もあります。
ここを分けずにいると、本来は職場へ相談したり、体制を見直したりする必要がある問題まで、
「自分がもっと頑張らなければ」
と背負いやすくなります。
3.利用者・家族対応が一番つらい
介護では、認知症などの影響から会話がかみ合わなかったり、強い言葉を受けたり、予想どおりに対応できなかったりする場面があります。ご家族からの強い要望や言葉への対応が負担になることもあります。
私自身、利用者さんへの対応でつらい思いをしたことがあります。
一方で、認知症などの影響がある場合、その背景を理解しながら対応することも介護の仕事の一部だと考えています。
ただし、それは介護職なら何をされても我慢し続けなければならない、という意味ではありません。
職員一人では抱えきれないほど対応が難しくなっているのに、その人だけへ対応を任せ続ける。困っていることを伝えても、職場としてなかなか動かない。
私自身も、職場側になかなか動いてもらえず、苦しいと感じた経験があります。
そうなれば、「利用者対応が大変」という問題だけではなく、職場の支援体制がどうなっているのかも分けて考える必要があります。
「利用者さんへの対応がつらいから介護に向いていない」と一つにまとめず、
対応そのものが難しいのか、それとも一人で抱えさせられていることがつらいのか。
ここを分けるだけでも、次に考えることは変わります。
利用者さんやご家族からの強い言葉を受け、勤務後まで引きずってしまうことが負担になっている場合は、「介護職で利用者・家族の暴言・強い言葉を引きずるとき|受け止め過ぎない3つの分け方」で、自分が改善できることと、自分だけでは変えられないことを分けて整理しています。
4.自分の中の「こうするべき」が負担を増やしている
外側の問題だけではなく、自分の考え方が負担を大きくしていることもあります。
私の場合は、いろいろな「べき」が重なって、かなりがんじがらめになっていた時期がありました。
たとえば、
- 「周りに迷惑をかけないようにするべき」
- 「頼まれたら断らずにやるべき」
- 「仕事中は常にフルパワーで働くべき」
といった考えです。
当時の自分にとっては、それが「普通」でした。
だから自分自身を追い込むだけではなく、その基準で働いていない人を見ると、
「なんでやらないんだろう」
とイライラすることもありました。
心理学などを学ぶ中で、こうした考え方を少しずつ緩めていきました。
ただ、ここで言いたいのは「考え方を変えれば全部解決する」ということではありません。
人間関係や人手不足など、実際に職場側にある問題まで心理の問題にしてはいけません。
「職場の問題」と「自分の中で負担を増やしているもの」は、両方存在することがあります。
この視点を持っておくと、職場側の問題と、自分で少し調整できる部分を混同しにくくなります。
原因が見えてきたら「休むことで余裕が戻るか」「誰が変えられる問題か」を考える
「何が一番嫌なのか」が少し見えてきたら、次はその問題をどう扱うか考えます。
ここで確認したいのは、次の2つです。
- 休むことで、考える余裕が少し戻りそうな負担なのか
- 自分で変えられる問題なのか、それとも誰かに働きかける必要がある問題なのか
この二つを分けると、次の行動を選びやすくなります。
まず、休むことで考える余裕が戻りそうか
ストレスがたまったとき、休むことは大切です。
疲れが中心なら、休息を取ることで少し余裕が戻ることもあります。
その余裕が戻って初めて、
「自分は何が嫌だったんだろう」
と考えられることもあります。
一方で、私自身は、
「休んでリフレッシュしたから、人間関係や職場体制まで変わった」
という感覚はあまりありませんでした。
休みの日に気分転換できても、職場へ戻れば同じ人間関係や同じ体制があります。
だから、
休んだら少し楽になった=問題は解決した
とは限りません。
休息と問題解決は、分けて考えた方がいいと思います。
自分で少し調整できることか
たとえば、
「全部完璧にやらなければ」
「頼まれた仕事は断ってはいけない」
という自分の中の基準が負担を増やしているなら、少し緩める余地があるかもしれません。
自分で変えられる部分があるなら、まずそこから小さく整える方法があります。
人との関わり方を変えることで軽くなることか
特定の人との距離や関わり方が中心なら、人間関係への対処を考える方が先です。
この段階で「もう介護を辞めるしかない」とまで広げる必要はありません。
職場へ相談すれば変わる可能性があることか
業務量、職員配置、情報共有、利用者対応へのフォローなど、自分一人では変えにくい問題なら、職場へ伝える段階があります。
ここでは、
「自分が我慢できるか」
だけで判断するのではなく、
「これは個人で抱える問題なのか、職場として調整する問題なのか」
を見ることが大切です。
相談しても変わりにくい、環境そのものの問題か
何度同じ問題が起きても変わらない。
相談しても動かない。
特定の一人ではなく、職場全体の体制や考え方に問題を感じている。
そこまで来ると、自分の対処法だけを増やしても解決しにくくなります。
その場合は「もっと上手に耐える方法」ではなく、今の職場そのものを見直す段階かもしれません。
個別の対処よりも、「この職場そのものに残れる条件があるのか」を見直したい場合は、「辞めたほうがいい介護施設の特徴|残る・相談する・離れるを決める判断基準」で、職場の安全・改善力・教育体制などを5つの観点から整理しています。
原因によって、次に考えることは変わる
ここまで整理して、
「自分はこれが一番つらかったのかもしれない」
と見えてきたら、その原因に合ったところへ進めば十分です。
人間関係が一番つらかった場合
先輩、同僚、上司との関係や職場の空気が中心なら、「介護職の人間関係がしんどいとき|原因の切り分けと対処法」で、原因の切り分けと最初に取る対処を整理しています。
一方で、特定の相手から強い口調で繰り返し責められる、威圧的な言動が続くなど、「単なる人間関係の悩みなのか、指導の範囲を超えているのか」と引っかかっている場合は、「介護職のパワハラかもしれないとき|指導との違い・記録・相談の順番」で、起きた出来事の整理と記録・相談までの順番を確認できます。
職場へ相談した方がよさそうな場合
人間関係など、自分だけでは変えにくく、職場へ相談する必要がありそうな問題なら、誰に・何を・どの順番で伝えるかを考える段階です。
相談すると決めた場合は、「介護職の人間関係を相談するとき|相談相手・伝え方・最初の順番」で整理しています。
仕事が終わっても頭から離れない場合
勤務中の問題だけでなく、家に帰ってからも「あれでよかったのかな」「もっとできたんじゃないか」と頭の中でぐるぐるすること自体が大きな負担になっている場合は、「介護の仕事が頭から離れないとき|一人反省会を終える整理手順」で、今日考えることと明日確認することを分ける方法を整理しています。
「介護そのもの」か「今の職場」かまで迷っている場合
原因を分けてみた結果、「そもそも介護を続けること自体がつらいのか」「介護は嫌いではないけれど、この職場がつらいのか」というところまで迷っている場合は、「介護職を辞めたいとき|『介護が無理』か『今の職場が無理』かを見分ける方法」で、介護・職場・今の自分の状態を分けて整理しています。
今の職場を変えたいと思った場合
整理した結果、「介護そのものを辞めたいわけではないけれど、今の職場は変えたい」と感じた場合や、今の職場で変えられる余地があるのか、それとも職場そのものを変えた方がよいのか迷っている場合は、「介護職の異動と転職、どちらを選ぶ?変えたいものから考える判断基準」で、次の選択肢を整理しています。
ここでは、それぞれの詳しい対処までは扱いません。
今の自分の負担の中心を見つけるための入口として使ってみてください。
自分で整理すること自体が難しいときは、一人で答えを出さなくていい
ここまで「何が一番嫌なのか考えてみる」と書いてきました。
ただ、いつでも冷静に自分の状態を整理できるわけではありません。
疲れ切っていて、
「何が嫌なのかも分からない」
「考えようとしてもまとまらない」
「もう自分だけではどうしたらいいのか分からない」
ということもあります。
そういう状態で、この記事の4分類を完璧にやる必要はありません。
これは「この状態ならこの病気」と自分で判断するためではありません。
一方で、体調や病気について相談したいというより、
「何がつらいのか自分でも整理できない」
「相談するべきか、異動や転職まで考えるべきか、一人では決めにくい」
という場合もあります。
職場の人間関係や今後の動き方を、一人で整理するのが難しい場合は、個別に話しながら整理する相談も行っています。
まず「今、一番嫌なこと」を一つだけ挙げてみる
介護職のストレスは、
「介護だから大変」
だけでは整理できません。
人間関係なのか。
仕事量や職場体制なのか。
利用者・家族対応なのか。
自分の中の「こうするべき」が負担を増やしているのか。
実際には、それらがいくつも重なっていることもあります。
全部を今日解決する必要はありません。
まず、一つだけ考えてみてください。
「今の仕事で、自分が一番嫌なのは何だろう」
そこが見えれば、
- 休んで少し余裕を戻すのか
- 自分で少し整えるのか
- 人との関わり方を変えるのか
- 職場へ相談するのか
- 今の環境そのものを見直すのか
次に考えることが少し絞れます。
「介護の仕事が全部つらい」と見えているときほど、いきなり大きな決断をする前に、何に削られているのかを一つずつ分ける。
まずは、そこからで大丈夫です。
