心を削られない働き方

介護職で利用者・家族の暴言・強い言葉を引きずるとき|受け止め過ぎない3つの分け方

なやま

「なんでそんなこともできないの」

「ちゃんとやってくれないと困る」

利用者さんやご家族から強い言葉を受けると、その場が終わってからも頭に残ることがあります。

「自分の対応が悪かったのかな」

「もっと上手くできたんじゃないか」

と、帰宅してからまで考えてしまうこともあると思います。

介護の仕事をしている以上、こちらに不手際があれば振り返る必要はあります。

一方で、強く言われたことすべてを、自分の能力や人格への評価として持ち帰る必要はありません。

私自身も、認知症のある利用者さんから何度も怒鳴られたり、強い口調で責められたりした経験があります。

病気の影響があると理解していても、怖さが残ったり、腹が立ったり、次に対応するのが嫌になったりすることはありました。

だから私は、強い言葉を受けたときに大切なのは「何も感じないこと」ではなく、その言葉の中から自分が受け取るべき内容だけを取り出すことだと考えています。

この記事では、

「自分が直せる具体的な内容」
「自分の能力や人格まで背負わなくていい部分」
「その場ではまだ判断できないこと」

の3つから、利用者さんやご家族の強い言葉を持ち帰り過ぎないための考え方を整理します。

この記事のポイント
  • 強い言葉の中に、自分が次に直せる具体的な内容があるかを確認する
  • 相手の状態・期待・強い言い方まで、自分の能力や人格への評価として持ち帰らない
  • 判断できないことは「まだ分からない」で止め、一人で抱えず共有・相談する

強い言葉は「指摘の中身」と「自分への評価」を分けて受け取る

強い言葉を受けると、言われた内容以上に、

「自分は介護士としてダメなのではないか」

「相手を怒らせた自分が悪いのではないか」

と考えてしまうことがあります。

ですが、最初に分けたいのは、相手が強く言ったことと、その言葉の内容がすべて正しいことです。

たとえば、自分の説明が足りなかった場面で、

「なんでそんなこともできないの」

と言われたとします。

このとき、

「説明が足りなかった」

という具体的な部分は振り返っても、

「そんなこともできない人間だ」

「介護士として能力がない」

というところまで、自分の中で評価を大きくする必要はありません。

指摘の中に直せる事実があることと、強く言われた評価まで受け入れることは別です。

利用者さんから強く責められたとしても、その背景には本人の状態や不安、そのときの状況など、自分の介助だけでは説明できないものが含まれていることがあります。

職員によって反応が違う利用者さんもいました。

そうした場面まで、

「自分の介助が下手だから怒られた」

と全部こちら側の問題にすると、本来は自分では変えられない部分まで背負うことになります。

反対に、

「利用者さんだから仕方ない」

とすべて流せばいいわけでもありません。

こちらに直せることがあるなら、そこは受け取る必要があります。

見るべきなのは、言葉の強さそのものではなく、その中に自分が次から直せる具体的な内容があるかどうかです。

自分に直せることがあれば、そこだけを持ち帰る

私自身は、自分側に改善できる不手際があった場合は、必要な謝罪をして、同じことが起こらないように努める必要があると考えています。

たとえば、

  • 確認すべきことを確認していなかった
  • 必要な説明が足りなかった
  • 決められた対応から外れていた

など、自分が具体的に直せる事実があるなら、相手の言い方とは分けて振り返ります。

相手の言い方がきつかったからといって、自分側の不手際までなかったことにはできません。

ただ、ここで受け取るのは、

「次に何を直すか」

です。

「だから自分はダメな介護士だ」

まで広げる必要はありません。

説明不足だったのであれば、

「次は説明してから介助に入ろう」

と決める。

確認不足だったのであれば、

「次はここを確認してから動こう」

と決める。

一つの不手際を、仕事全体や自分自身の評価にまで広げないことが大切です。

相手の状態や期待まで、自分の能力不足にしなくていい

一方で、介護現場には自分の努力だけでは変えられないこともあります。

私自身、ご家族が本人の状態をまだ十分に受け入れきれていないように感じる中で、現場の一職員だけでは応えきれない期待を求められ、困ったことがありました。

ご家族にも思いや希望があると思います。

だからといって、その希望を実現できないことまで、

「自分がもっと頑張れば何とかできたのでは」

と、現場職員一人が背負う必要はないと思っています。

利用者さんからの強い言葉でも同じです。

本人の状態や不安、そのときの状況、周囲の環境など、自分一人ではコントロールできないことがあります。

そうしたものまで、

「自分の対応が悪かったからこうなった」

と、自分の能力への評価へ変える必要はありません。

自分に直せる部分があれば、そこは直す。

でも、相手の状態や期待まで、自分一人の力量で解決すべき問題にはしない。

この二つは分けて考えていいと思います。

指摘の中身と強い言い方が混ざっているなら、その場で白黒をつけなくていい

ここまで読むと、

「自分に直せることか、背負わなくていいことかを判断すればいい」

と思うかもしれません。

でも、実際の介護現場はそこまで単純ではありません。

たとえば、

「自分にも説明不足はあった。でも、あそこまで強く言われることだったのだろうか」

「病気の影響があることは分かっている。でも、普通に傷ついた」

「家族の言いたいことも分かる。でも、自分一人ではどうにもならない」

ということがあります。

私自身も、言い方と指摘内容を明確に分けられればいいと思います。

ただ、強く言われた直後は感情も動いています。

実際には、そこまできれいに切り分けられない場面のほうが多いかもしれません。

だから、無理に白黒をつけなくてもいいと思っています。

そんなときは、いったん次の3つに分けてみてください。

1.次に直せる具体的なこと

確認不足や説明不足など、

「次から自分で変えられること」

です。

これは振り返ります。

ただし、振り返るのは具体的な行動までです。

「だから自分は仕事ができない」

という評価には広げません。

2.自分の評価として受け取らなくていいこと

相手の状態や、その人自身の強い言い方、現場職員一人では実現できない要求などです。

そこに相手なりの理由があったとしても、

「自分の能力が足りないから言われた」

と、そのまま自分への評価に変える必要はありません。

3.まだ切り分けられないこと

これが意外と多いと思います。

自分にも何かあった気はする。

でも、全部自分の責任とも思えない。

強い言い方に傷ついていて、冷静に考えられない。

そんな状態なら、「まだ分からない」で止めていいと思います。

分からないものまで無理やり、

「結局、自分が悪かったんだ」

に入れない。

安全上すぐに共有する必要がある状況でなければ、少し時間を置いてから確認したり、ほかの職員に状況を聞いたりすればいい。

その場で結論を出さないことも、一つの整理の仕方です。

背景を理解していても、介助者が傷つかないわけではない

認知症のある利用者さんから強い言葉を受けたとき、私は基本的に、

「病気の影響もある」

「本人が本当にそう思っているとは限らない」

と考えていました。

だから、言葉をそのまま自分への本心として受け取る必要はないと思っています。

厚生労働省の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」でも、利用者や家族等による怒鳴り声などを精神的暴力の例として挙げる一方、認知症などの症状として現れた言動については、ハラスメントとは分けて対応する必要があるとされています。

つまり、強い言葉をすべて同じものとして扱うのではなく、その背景や状態を確認することが必要です。

ただ、背景を理解することと、介助する職員が何を言われても負担を抱えずに対応し続けなければならないことは別だと思います。

出典:厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」

それでも、傷つくときは傷つきます。

怖いものは怖いです。

腹が立つこともあります。

次に対応するときに気が重くなることもあります。

背景を理解できることと、何を言われても平気になることは別です。

「認知症なんだから気にしてはいけない」

「介護士なんだからこれくらい受け流さないと」

と、傷ついた自分まで責める必要はありません。

大切なのは、傷つかなかったことにするのではなく、

「私は今、傷ついている」

と分かったうえで、

その言葉のどこまでを、自分が次に直すための材料として持ち帰るのか

を考えることです。

一人で答えを出せない問題は、「受け止め方」だけで解決しなくていい

強い言葉を受けたとき、自分の対応を振り返ることは大切です。

ただし、同じことが繰り返されていたり、自分一人では対応を判断できなかったりする場合まで、

「自分がもっと気にしないようにしよう」

と受け止め方だけで解決する必要はありません。

たとえば、次のような状態です。

  • 同じ強い言葉が繰り返されている
  • 暴力が出るようになっている
  • スタッフだけでは対応が難しくなっている
  • ほかの利用者さんにも影響が出ている
  • ご家族からの要求が、現場職員一人では判断できない内容になっている

このような場合は、個人で受け止め方を工夫する段階から、職場として共有・対応を考える段階へ移っている可能性があります。

なお、「何個当てはまったら相談する」というものではありません。

暴力や利用者さんの安全に関わることなどは、一つの出来事でも早めに共有した方がよい場合があります。

また、

「自分の対応を見直すことなのか」

「個人ではなくチームで考えることなのか」

自分では判断できない場合も、管理者や相談できる立場の人へ共有して、一緒に整理して構いません。

ご家族からの要求についても、現場職員一人では判断できない内容であれば、管理者や相談員など、適切な立場へつなぐ問題です。

この記事では、詳しい記録の残し方までは扱いません。利用者さんやご家族から受けた強い言葉を職場へ共有・相談するために事実を整理したい場合は、「介護職が人間関係の相談前に残したい記録|事実メモの書き方」で、出来事・自分への影響・相談したいことを分ける方法を整理しています。

一人で答えを出せない問題まで、自分の能力不足として一人で背負う必要はありません。

こうした負担が続き、職場から十分な支援も得られず、「この環境で働き続けるか」まで迷っている場合は、「介護職を辞めたいとき|『介護が無理』か『今の職場が無理』かを見分ける方法」で、介護そのものの問題と今の職場の問題を分けて整理しています。

自分の課題として持ち帰るのは「次に直せること」まででいい

利用者さんやご家族から強い言葉を受けた日は、どうしても言われた言葉そのものが頭に残ります。

そんなときに、

「気にしないようにしよう」

と無理に切り替えなくてもいいと思います。

代わりに一度だけ、

「この言葉の中で、自分が次に直せる具体的なことは何だろう」

と考えてみてください。

明確なものが一つあるなら、それを次に直す。

相手の状態や、自分一人では変えられないことなら、自分の能力不足としては持ち帰らない。

まだ分からないなら、

「今は決めずに、落ち着いてから確認する」

「一人で判断せず、相談してから考える」

としておく。

強い言葉を受け止め過ぎないというのは、何を言われても平気になることではありません。

自分が直すべき部分は直す。

傷ついた気持ちまで否定しない。

でも、強く言われたことすべてを、

「自分はダメな介護士なんだ」

という評価には変えない。

自分が受け取るのは、次に使える具体的な内容まで。

私は、そのくらいの境界線でいいと思っています。

著者プロフィール
なやま
なやま
介護職約10年|介護福祉士|心理資格3種|複数回の転職を経験 介護現場の人間関係・職場の理不尽・自責や「辞めたい」を、実体験と心理の両面から整理。 自分だけの問題だと抱え込まず、残る・相談する・異動する・転職するなど、次の行動を選ぶための判断材料を発信しています。

介護の仕事で感じたことや、私自身の経験・考え方はnoteでも書いています。

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