介護職の人間関係がしんどいときに|原因の切り分けと対処法
介護の仕事そのものは嫌いではない。それでも、特定の先輩や同僚と一緒に働く日だけ、勤務前から気持ちが重くなる。
利用者のために働いているはずなのに、気づけば「今日は機嫌が悪くないだろうか」「この言い方なら怒られないだろうか」と、職員の顔色ばかり見ている。そんな状態が続くと、「自分のコミュニケーションに問題があるのではないか」「介護職に向いていないのではないか」と考えてしまうことがあります。
令和7年度の介護労働実態調査では、直前の仕事も介護関係だった人が前職を辞めた理由として、「職場の人間関係に問題があったため」が27.3%で最も多くなっています。
出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和7年度 介護労働実態調査」
ただ、人間関係のしんどさは、単なる相性や本人のコミュニケーションだけでは説明できません。
いきなり「自分が悪い」「もう辞めるしかない」と決める前に、今起きていることを「人」「業務」「職場の体制」「自分の中で膨らんでいる負担」の4つに分けてみてください。
それにより、どこに問題があるかによって、距離を取るのか、基準を確認するのか、上司へ相談するのかが変わります。
この記事では、介護現場の人間関係がしんどいときに、原因と負担を切り分け、最初の一手を選ぶ方法をお伝えします。
介護職の人間関係がしんどいときは、原因と負担を4つに分ける
人間関係で悩んでいると、相手の態度、自分の失敗、職場への不満が頭の中で混ざりやすくなります。そのままでは、「もっと自分がうまく立ち回るしかない」「もう辞めるしかない」という両極端な結論になりがちです。
まずは、今起きていることを次の4つに分けてみます。
| 切り分ける項目 | よくある状態 | 最初に考える対処 |
|---|---|---|
| 人の問題 | 特定の人だけ口調が強い、無視や嫌味がある、機嫌で態度が変わる | 必要な連携を残し、会話を広げ過ぎない |
| 業務の問題 | 人によって指示が違う、申し送りが曖昧、役割分担が不明確 | 職場の基準・記録・判断する人を確認する |
| 職場の体制の問題 | 問題が繰り返される、相談しても放置される、管理者が介入しない | 事実と業務への影響、してほしい対応を整理して上司へ伝える |
| 自分の中で膨らむ負担 | 相手の機嫌まで自分の責任にする、帰宅後も一人反省会が続く | 自分の改善点と、背負わなくてよい部分を分ける |
4つのうち一つだけを選ぶ必要はありません。一つの出来事に、複数の問題が重なることもあります。
たとえば、先輩から強い口調で「そのやり方は違う」と言われたとします。先輩の言い方は「人」の問題かもしれません。
しかし、職員によって教える内容が違うなら「業務」の問題です。管理者が違いを把握しながら基準を整えていないなら、「職場の体制」の問題も含まれます。
そこへ「自分が何もできないから怒られた」と考え続けると、自分の中の負担も大きくなります。
4つ目は、「自分自身に原因がある」という意味ではありません。外で起きた問題を自分の能力や人としての価値にまで結びつけ、苦しさを長引かせていないかを見るための項目です。
特定の人に振り回されるときは、必要な会話だけを残す
私自身、特定の職員とペアになる日は、他の日よりも憂うつに感じることがありました。
勤務の序盤でその人の機嫌を損ねると、その後の業務や連携が難しくなる。そう分かっていたため、言葉や行動を先回りして調整していました。利用者の様子だけでなく、職員の機嫌にも注意を向け続けるため、それだけで消耗します。
経験を重ねてからは、相手の機嫌を直そうとしたり、自分の正しさを何とか分かってもらおうとしたりすることが減りました。
冷たくあしらうわけではありません。業務に必要な会話はきちんとする。ただし、相手の感情に付き合って会話を広げ過ぎない。会話を必要以上に長引かせず、自分も巻き込まれにくい言葉と距離を選ぶようになりました。
たとえば、
「了解です。確認します」
「今は対応に戻りますね」
のように、業務へ戻る一言で区切ります。
大切なのは、必要な報告や確認まで避けることではありません。相手の感情を整えたり、自分の正しさを分かってもらったりするための会話を増やさないことです。
怖い先輩への報告・確認の通し方や、強い口調で言われたときの具体的な返し方は、「介護職で先輩が怖い|強い口調に萎縮したときの短い返し方と距離の取り方」で詳しく整理しています。
指示の違いや申し送りの行き違いは、相性ではなく業務の問題として扱う
人間関係の悩みに見えても、実際には仕事の仕組みが原因になっていることがあります。
- 職員ごとに介助の順番ややり方が違う
- 教わっていないルールを「普通は分かる」と言われる
- 口頭だけの申し送りが行き違い、あとから個人の責任にされる
- 誰が判断するのか曖昧なまま、現場職員同士で責め合う
このような場面で全員の好みに合わせようとすると、相手が変わるたびに正解も変わってしまいます。
確認したいのは、「その人が好むやり方」ではなく、「職場として共有されている基準」です。
ただし、どこで困っているかによって、次に確認することは変わります。
- 「普通はこうする」と個人のやり方を当然のルールとして求められる
→ 「介護現場で『普通はこうする』と言われたとき|相手ルールと共有された基準を分ける方法」 - 申し送りが情報共有ではなく「誰が悪いか」という責任追及になる
→ 「介護の申し送りで『担当は誰?』と責任追及が始まったとき|犯人探しを再発防止へ戻す方法」 - 怖さや「教えてもらえない」状況から、必要な質問そのものができない
→ 「新人介護職が質問できない・教えてもらえないとき|安全を守る確認の順番」
人間関係だけの問題として抱えず、いま困っている場面に近いものから整理してみてください。
問題が繰り返されるなら、個人間ではなく職場の体制を見る
当人同士の工夫だけでは解決できない問題もあります。
- 同じ職員の言動で複数人が困っている
- 相談しても「うまくやって」と戻される
- 人によって指導内容が違う状態を管理者が放置している
- 相手の機嫌によって、連携や利用者対応に支障が出る
- 安全や尊厳より、職場の空気を乱さないことが優先される
ここまで来ると、「自分がもっとうまく接すればよい」という範囲を超えています。
相手を説得し続けるよりも、何が起きているのか、業務や利用者対応にどのような影響が出ているのかを整理して、上司へ相談する段階です。
誰に相談するか、何を伝えるか、最初にどう話を組み立てるかは、「介護職の人間関係を相談するとき|相談相手・伝え方・最初の順番」で詳しく整理しています。
相手の機嫌と、自分の価値を結びつけない
新人の頃や、自分の仕事に自信がなかった時期、私は相手の機嫌が悪くなると、「自分の言い方が悪かったのではないか」「もっとうまく立ち回るべきだったのではないか」と、一人反省会をすることがよくありました。
心理学を学び、現場経験を重ねるなかで、少しずつ自分の改善点と、相手や職場の問題を分けて考えられるようになりました。
自分の伝え方に改善できるところがあれば、必要な部分は振り返る。しかし、相手がどう受け取るか、機嫌を態度に出すか、職場がそれを放置するかまで、自分の力不足として背負う必要はありません。
これは、心理学でいう「課題の分離」に近い考え方です。ただし、「全部相手が悪い」と決めつけるためのものではありません。
次の3つに分けて考えます。
- 自分が次に変えられる行動はあるか
- 相手にしか変えられない感情や態度は何か
- 上司や職場が整えるべき基準・配置・指導は何か
振り返った結果、自分にできることが一つ見つかったなら、それを次回試せば十分です。同じ場面を何度も思い返し、自分の能力や価値まで下げる必要はありません。
課題を切り分けるのは、相手を悪者にするためではなく、自分が背負う範囲を必要以上に広げないためです。
もし、勤務が終わってからも同じ場面を何度も思い返し、一人反省会が止まらなくなっているなら、それは現場での対処とは別に整理した方がよい悩みです。
帰宅後も仕事が頭から離れないときは、「介護の仕事が頭から離れないとき|一人反省会を終える整理手順」で、考える内容を「事実・翌日確認すること・今夜は扱わないこと」に分ける方法を整理しています。
相手の機嫌に巻き込まれないことと、問題を見て見ぬふりすることは別
私は、相手に自分の正しさを認めさせるための言い合いは続けない一方で、利用者の安全や尊厳、業務への影響に関わることは流さないようにしていました。
本人へ伝えても改善が見込めない場合や、直接伝えることで連携が悪化しそうな場合は、上司へ繋いでいました。あらかじめ業務に支障が出ると分かっている場合も、問題が起きる前に共有していました。
接遇上の問題を報告したことで、朝礼やミーティングで職場全体が再確認する機会につながったこともあります。
もちろん、報告しても変わらなかったことはありました。それでも、実際に変わったこともあります。
「伝えても変わらないかもしれない」と「伝える意味がない」は同じではありません。
判断に迷うときは、次の境界線を目安にしてください。
その場で会話を広げなくてよいもの
- 相手の一時的な不機嫌
- その場で言い合っても業務上の結論が変わらない好みの押し付け
- 説明しても平行線になる「どちらが正しいか」の争い
個人で抱えず、共有・相談したいもの
- 利用者の安全や尊厳に影響する
- 必要な情報共有や連携ができない
- 嫌味、強い言動、責任転嫁が繰り返される
- 正式な基準がなく、職員によって指示が変わる
- 特定の人の機嫌によって、勤務や業務が左右される
一度は会話を広げなかったことでも、繰り返され、出勤や連携に影響するようになれば、個人で抱える問題ではありません。
「その人と仲良くできるか」ではなく、「利用者と業務を守れる状態か」で線を引くと、判断しやすくなります。
無視や嫌味、悪口が繰り返されていて、どこまで反応を減らしてよいのか、どこから記録や相談へ切り替えるのか迷う場合は、「介護職で無視・嫌味・悪口がつらいとき|反応を減らす方法と相談の目安」で具体的に整理しています。
相談しても変わらないなら、「介護」と「今の職場」を分けて考える
相談しても状況が変わらないと、「自分の伝え方が悪かったのではないか」「もう少し我慢すべきではないか」と考えやすくなります。
しかし、ここでもすぐに自分の責任へ戻す必要はありません。
次に考えたいのは、
「介護の仕事そのものがつらいのか」
「介護は続けたいけれど、今の職場の人間関係や体制がつらいのか」
を分けることです。
介護の仕事は続けたい一方で、相談しても業務上の支障が改善しない、必要な連携が成り立たない状態が続いているなら、異動や転職を含めて環境を変えることも選択肢になります。
すぐに辞めると決めるのではなく、まず「介護」と「今の職場」を切り分けたい場合は、『介護が無理』か『今の職場が無理』かを見分ける方法で整理しています。

まずは、直近の出来事を一つだけ4つに分ける
人間関係がしんどいとき、職場全体や自分の性格を一度に結論づける必要はありません。
まず、直近でつらかった出来事を一つだけ書き出してみてください。
- 実際に何を言われ、何が起きたか
- 「人・業務・体制・自分の中の負担」のどれが大きいか。複数でもよい
- 次にすることを一つだけ選ぶ
次の行動は、たとえば以下のどれかです。
- 業務に必要な会話だけを残す
- 職場の基準を確認する
- 事実と業務への影響を整理して上司へ相談する
- 一人反省会を「次回確認すること一つ」で区切る
相手の機嫌を完全に変えることはできません。しかし、自分がどこまで関わり、何を業務の問題として戻し、どこから上司へ渡すかは選べます。
自分の正しさを全員に分かってもらうことよりも、必要な仕事ができる状態を保つことが大切です。
自分に直せる部分は直しつつ、相手や職場側の問題まで、自分自身の価値と結びつけないようにする。
その切り分けが、介護の仕事を続けながら、人間関係で削られ過ぎないための最初の一歩になります。
