介護職のサービス残業は当たり前?早出・申し送り・時間外業務への対処法

なやま

申し送りに間に合うように、勤務開始より少し早く来る。

定時を過ぎても、利用者対応や記録、片付け、翌日の準備が終わるまで残る。

休憩中にナースコールや電話へ対応する。勤務時間外に研修へ参加する。

介護現場では、こうした時間が「みんなやっている」「これくらい普通」と扱われることがあります。

私自身も、申し送り前に必要な情報を確認しておかないと、その後の勤務に入りにくい職場で働いた経験があります。早めに来ることも、仕事が終わらなければ残ることも、働く側の暗黙の了解のようになっていました。

もちろん、介護では利用者対応などで予定どおりに仕事が終わらないことがあります。

ただ、仕事が予定より長引くことと、その時間を無給で働くことは別の話です。

「自分が勝手に早く来ているだけなのか」

「仕事が遅い自分の問題なのか」

「10分、15分くらいなら残業とは言えないのか」

「周りもやっているのに、自分だけ申請していいのか」

こうして迷っているなら、最初から会社と争うか、残業代を請求するかまで決める必要はありません。

まずは、実際に何時から何時まで、何の仕事をしていて、その時間が勤怠上どう扱われているのかを確認するところから始められます。

「介護だから仕方ない」「みんなやっている」で終わらせず、実際の働き方を一度見える形にする。

それが、職場へ確認する場合にも、外部へ相談する場合にも、今後の働き方を考える場合にも土台になります。

この記事では、早出・申し送り・終業後の記録・研修などを例に、サービス残業かもしれないと感じたときの対処法を整理します。

この記事のポイント
  • 早出や残業は「何分か」だけでなく、実際に何をしていたかを見る
  • まず勤務時間・業務内容・勤怠上の記録を残す
  • 社内で確認する、外部へ相談する、働き続ける条件を見直すという選択肢を分けて考える

※この記事では、勤務時間外に業務を行っているにもかかわらず、その時間に対する賃金が支払われていない状態を便宜上「サービス残業」と表現します。個別の時間が法律上どのように扱われるかは、実際の勤務状況によって異なります。

介護職のサービス残業は「みんなやっている」だけでは判断できない

介護職では、勤務時間から仕事がはみ出しやすい場面があります。

  • 申し送りに備えた始業前の情報確認
  • 制服への着替えや業務準備
  • 終業後の利用者対応・記録・片付け
  • 休憩中の電話やナースコールへの対応
  • 勤務時間外の会議や研修
  • タイムカードを押した後の業務

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間とされ、明示または黙示の指示によって業務を行っている時間も労働時間に当たるとされています。

業務に必要な準備や後始末、参加を義務づけられた研修なども、労働時間に該当する例として示されています。

一方で、早く職場へ着いただけで、その時間すべてが自動的に労働時間になるわけでもありません。

大切なのは、何時に職場にいたかだけでなく、その時間に何をしていて、なぜ必要だったのかを見ることです。

私が経験した職場では、申し送り前に情報を確認しておかないと、その後の勤務に入りにくい状況がありました。

表面上は「自主的に早く来ている」ように見えても、その時間に確認しないと仕事が成立しない。

そうした場合は、

  • 勤務開始後に確認する時間があったか
  • 行わなければ業務に支障が出たか
  • 先輩や主任も同じ働き方をしていたか
  • その時間が勤怠へ反映されていたか

まで見た方が、実態に近づきます。

ただ早く着いて過ごしていた時間とは分けて、実際に業務をしていた時間を見ることが大切です。

「自分の仕事が遅いだけ」と業務量の問題を分ける

サービス残業の話をすると、

「時間内に終わらせればいい」

「もっと効率よく働けばいい」

と考えることもあります。

実際、自分の段取りを変えたり、無駄な作業を減らしたりして改善できる部分はあります。

ただ、勤務時間から仕事がはみ出す理由を、すべて個人の努力不足に戻すのも違います。

介護現場では、利用者対応が重なったり、記録や申し送りが多かったり、人員に対して業務量が多かったりと、自分一人では変えにくい要因もあります。

私自身も、「この仕事だけが遅い」というより、そもそもの業務量が多いと感じることがありました。

さらに、職員によって仕事への考え方や熱量も違います。個人の努力に任せ続けると、よく動く人ほど仕事を拾い、その人だけが消耗していくこともあります。

ここは、

  • 自分で改善できる部分
  • チームで調整すべき部分
  • 管理側が業務量や配置を見直す部分

に分けて考えます。

「時間内に終わらせて」で止めるのではなく、なぜ仕事が勤務時間からはみ出しているのかを見ることが必要です。

まず「実際に働いた時間」を記録する

サービス残業かもしれないと思っても、最初から未払い残業代を請求すると決める必要はありません。

まず、自分自身が実態を確認できるようにします。

最低限、次の5つを残しておくと整理しやすくなります。

  1. いつ働いたか
  2. 実際に業務を始めた時刻・終えた時刻
  3. 勤務時間外に何をしていたか
  4. タイムカードや勤怠上では何時になっているか
  5. なぜその時間に業務をする必要があったか

たとえば、

「8時30分勤務開始。8時15分から申し送りに必要な情報を確認。勤怠上は8時30分開始」

「17時30分勤務終了。利用者対応後に記録と翌日の準備を行い、17時55分に終了」

という形です。

あわせて、勤怠データ、勤務表、給与明細、自分で残した勤務時間の記録なども整理しておくとよいでしょう。

厚生労働省のガイドラインでも、使用者には労働者ごとの始業・終業時刻を確認し、記録することが求められています。

私自身、未払い分について後から確認したときには、勤怠データ、勤務表、勤務時間を記録していたアプリなどが資料になりました。

実際に打刻した時刻と勤怠上の時刻が一致していないこともありましたが、元の記録が残っていたため、後から勤務実態を確認する材料として使えました。

これは、「今から請求のための証拠を集めよう」という意味ではありません。

今は請求まで考えていなくても、後から自分が実際にどう働いていたのかを確認できる状態にしておく。

それだけでも、その後の相談や判断がしやすくなります。

勤務時間の記録を相談に使える形へ整えたい場合は、「介護職が人間関係の相談前に残したい記録|事実メモの書き方」で整理方法をまとめています。

職場のルールと「実際の働き方」を比べる

勤務実態を記録したら、職場側のルールも確認します。

所定勤務時間、残業申請の方法、事前承認の有無、始業前の準備、研修や会議、休憩時間の扱いなどです。

ここで見たいのは、ルールがあるかではなく、実際の働き方と合っているかです。

「残業は申請してください」と書かれていても、実際には申請しにくい。

「研修は勤務時間内に」と言われても、通常業務の中に研修する時間がない。

「定時で帰って」と言われても、利用者対応や記録が終わる業務設計になっていない。

こうした場合、ルールの文章だけでは実態は分かりません。

時間外の研修

研修も、

「勤務時間外なら全部労働時間」

「研修なら全部自己研鑽」

と一律には判断できません。

厚生労働省の「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」では、業務上参加を義務づけられている研修・教育訓練や、使用者の指示による業務に必要な学習は、労働時間に当たる例として示されています。

一方、業務上義務づけられていない自由参加の研修などは扱いが変わります。

私も別の職場で、「研修は勤務時間内で」とされながら、実際には時間を確保しにくい時期がありました。その後、時間外に行った研修は時間外勤務として扱われるようになりました。

確認したいのは、本当に自由参加だったのか、仕事として求められていたのかという実態です。

休憩中の対応

休憩未取得そのものは別記事の範囲なので、ここでは詳しく扱いません。

ただし、休憩として処理されている時間に、

  • ナースコールへ対応する
  • 利用者対応へ戻る
  • 電話に出る
  • 記録や確認をする

といったことが続いているなら、実際にどう過ごしていたかを残しておきます。

労働基準法では、休憩時間は労働者が自由に利用できるものでなければならないとされています。厚生労働省も、休憩中に電話や来客対応をするよう指示されている場合、その時間は労働時間として扱うと説明しています。

社内で確認するか、外部へ相談するか

記録を始めたら、次にどう動くかを考えます。

私は、必ず最初に直属の上司へ相談しなければいけないとは考えていません。

職場内で話せそうなら、まず勤怠の扱いを確認する方法があります。

申し送りのため、勤務開始前から情報確認をしています。この時間は勤怠上どのように申請すればよいでしょうか。

終業後に記録や翌日の準備が残ることがあります。この時間の残業申請方法を確認したいです。

最初から「法律違反ですよね」と対立する形にせず、事実の扱いを確認することもできます。

会社内に人事や相談窓口があり、利用できそうなら、そこへ相談する方法もあります。

ただ、職場全体で早出や残業が当たり前になっていると、問題提起そのものが難しい場合もあります。

私が未払い分について動いた職場では、社内相談を挟まず弁護士へ直接相談しました。当時は、職場全体でその働き方が普通になっていて、「社内で言っても意味がないだろう」と感じていたからです。

一方、別の職場では、問題を指摘する声が出たことで時間外研修の扱いが改善されたこともあります。

だから、「まず社内相談が正解」でも、「相談しても無駄が正解」でもありません。

これまでその職場で働く中で、

  • 問題を伝えたときに話を聞く職場か
  • 問題が出たあと実際に運用を変えたことがあるか
  • 相談した人だけが悪者になりそうな空気があるか
  • 自分が社内で話すことでどこまで消耗しそうか

といったことも判断材料になります。

社内で話しにくい場合の相談先

厚生労働省では、労働問題の相談先として、労働基準監督署、総合労働相談コーナー、労働条件相談ほっとラインなどを案内しています。

労働条件相談ほっとラインでは、賃金不払残業などについて無料・匿名で相談できます。

「会社へ言うのは怖い」

「そもそも相談するような状況なのか分からない」

という段階で、まず外部へ状況を話して整理する方法もあります。

個別の勤務時間が法律上どう評価されるかは、記事だけで決めず、必要に応じて公的窓口や弁護士などへ確認してください。

相談後は「返事」より、実際に何が変わったかを見る

職場へ問題を伝えたあと、見たいのは「分かりました」という返事だけではありません。

  • 実際の始業・終業時刻を確認したか
  • 勤怠の扱いを見直したか
  • 残業を申請できるようになったか
  • 申し送りや記録の時間を勤務内に確保したか
  • 業務量や役割分担を確認したか
  • 無給で働く時間が実際に減ったか

という、その後の変化です。

私が未払い分を請求した後には、私に対して「帰りなさい」と促されるようになりました。

ただ、私が気になっていたのは、一人を早く帰らせれば終わることではありませんでした。

なぜ勤務時間から業務がはみ出していたのか。業務量や仕事の回し方そのものに問題はなかったのか。

一人に帰るよう促すだけでは、なぜ時間外業務が生まれていたのかという問題の確認にはなりません。

一方で、研修のように、問題が出たあと実際の運用が変わった職場もありました。

相談後は、職場が実際に何を確認し、何を変えたかを見ます。

すでに伝えているのに実態が変わらない場合は、「介護職が上司に相談しても変わらないときの判断基準」で次の判断を整理できます。

改善するために戦い続けることだけが正解ではない

サービス残業に気づいたとき、

「会社へきちんと言わなければ」

「未払い分を請求しなければ」

と考えることもあると思います。

私自身、弁護士を通じて未払い分を請求した経験があります。同じ状況に戻っても、私はまた行動すると思います。

ただ、請求には時間も費用もかかり、精神的にも消耗しました。会社との関係も悪くなりました。

そして、本当は会社と争うこと自体がやりたいわけではありません。

今の私なら、

「この会社を変えるために、自分がどこまで消耗するのか」

まで考えます。

改善を求める。外部へ相談する。未払い分について専門家へ相談する。異動する。転職する。

どれか一つだけが正解ではありません。

私は今なら、そうしたことをしなくても、自分の働いた時間をきちんと扱ってもらえる職場へ移ることも、早い段階で選択肢に入れると思います。

これは、「サービス残業があったらすぐ転職した方がいい」という意味ではありません。

職場側が問題を確認し、実際に改善するなら、残る選択もあります。

一方で、記録して、伝えて、それでも同じ状態が続くなら、

その環境で働き続けること自体を見直す

という選択肢もあります。

まだ「異動か転職か」を決めていない場合は、「介護職の異動と転職、どちらを選ぶ?変えたいものから考える判断基準」で整理できます。

すでに転職すると決めている場合は、「介護職が転職すると決めたあと、何から始める?活動前に整理したいこと」へ進む段階です。

未払い分の請求を考える場合は時効にも注意する

未払い分について実際に請求を検討する場合は、時間が経つことで確認しにくくなる資料もあります。

2026年9月16日時点では、賃金請求権の消滅時効期間は法律上5年へ延長されていますが、当分の間は3年とされています。時間外・休日労働などに対する割増賃金も対象です。

個別のケースで、どの時間が労働時間に当たるか、どの賃金を請求できるかなどはこの記事だけで判断せず、労働基準監督署、労働局、弁護士などへ確認してください。

まずは「実際にどう働いているか」を残すところから

「介護だから仕方ない」

「みんなやっている」

「自分が遅いだけかもしれない」

そう考えていると、数分、十数分の勤務時間外の仕事は小さく見えてしまいます。

でも、最初から「争う」「請求する」「辞める」まで決める必要はありません。

まず確認したいのは、

  1. いつ
  2. どのような業務を
  3. 誰の指示・職場の慣行・業務上の必要によって行い
  4. 実際には何時から何時まで働き
  5. 勤怠上はどのように記録されているか

です。

実態を残しておけば、職場へ確認するのか、外部へ相談するのか、その職場で働き続ける条件を見直すのか、次の一歩を考えやすくなります。

「サービス残業かもしれない」と感じた段階なら、まずは事実を残すところから始めてみてください。

その記録を相談に使える形へ整理したい場合は、次の記事で日時・起きたこと・仕事への影響などをまとめる方法を紹介しています。

介護職が人間関係の相談前に残したい記録|事実メモの書き方
介護職が人間関係の相談前に残したい記録|事実メモの書き方

制度情報の確認日・参照元

制度情報確認日:2026年9月16日

この記事では、以下の公的情報を確認しています。

  • 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」
  • e-Gov法令検索「労働基準法」
  • 厚生労働省・都道府県労働局「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」
  • 厚生労働省「労働基準行政の相談窓口」
  • 厚生労働省「労働条件相談ほっとライン」
  • 厚生労働省「賃金請求権の消滅時効」に関するQ&A

著者プロフィール
なやま
なやま
介護職約10年|介護福祉士|心理資格3種|複数回の転職を経験 介護現場の人間関係・職場の理不尽・自責や「辞めたい」を、実体験と心理の両面から整理。 自分だけの問題だと抱え込まず、残る・相談する・異動する・転職するなど、次の行動を選ぶための判断材料を発信しています。

介護の仕事で感じたことや、私自身の経験・考え方はnoteでも書いています。

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