介護の申し送りで「担当は誰?」と責任追及が始まったとき|犯人探しを再発防止へ戻す方法
介助や業務の抜けが見つかったとき、申し送りで「担当は誰?」「最後に対応した人は?」と聞かれることがあります。
担当者や経緯を確認すること自体は必要です。
しかし、記録を確認したり、前後の勤務者へ経緯を確認したりしていなければ、答えられないこともあります。
自分がその業務に関わっていると、
「反論したら責任逃れだと思われるかもしれない」
「全部自分が悪かったことにして、早く話を終わらせた方がいいのではないか」
と感じることもあるでしょう。
大切なのは、誰が悪いかを先に決めるのではなく、利用者への影響と今必要な対応を確認し、分かっている事実と未確認の部分を分けることです。
そのうえで、自分に確認不足や抜けがあった部分は認め、次に誰が何を確認するのか、同じことを防ぐために何を見直すのかまで順番に考えていきます。
この記事では、責任追及が始まったときに確認したいことを、5つの順番に分けて整理します。
「担当者の確認」と「犯人探し」は同じではない
業務の抜けが見つかったとき、誰が担当していたのかを確認する必要はあります。
最後に利用者へ対応した職員や、記録を残す予定だった職員が分からなければ、詳しい経緯を調べられないからです。
問題は、担当者が分かったところで確認が止まり、
「その人の不注意だった」
「本人に気をつけてもらえばいい」
と結論づけてしまうことです。
業務の抜けは、一人の行動だけで起きているとは限りません。
- 必要な情報が勤務者へ伝わっていなかった
- 誰が実施し、誰が確認するのか曖昧だった
- 記録する場所が統一されていなかった
- 職員によって手順が違っていた
- 忙しい時間帯に業務が集中していた
こうした状態が残っていれば、注意された本人が気をつけても、別の職員が同じ抜けを起こす可能性があります。
担当者を確認するのは、責める人を決めるためではありません。
何が起きたのかを確認し、利用者へ必要な対応を行い、同じことを防ぐためです。
責任追及が始まったときの確認の順番
1.最初に利用者への影響を確認する
「誰がやったのか」という話が始まっても、最初に確認したいのは利用者への影響です。
必要な介助が実施されていなかったのであれば、まず確認するのは次の内容です。
- 現在の利用者の状態
- 今から必要な介助や観察
- 看護職や管理者への報告が必要か
- 次の勤務者へ何を伝えるか
- 記録へ何を残すか
担当者を探している間にも、利用者への対応は必要です。
責任の確認に時間を使い、現在必要な対応が遅れてしまっては、申し送りの目的から外れてしまいます。
話が責任追及へ向かいそうなときは、次のように戻せます。
「まず、利用者への影響と今必要な対応を確認しませんか」
「現在の状態を確認してから、経緯を整理したいです」
これは責任を避ける言葉ではありません。
確認する順番を、利用者の安全から始めるための言葉です。
2.確認できている事実と未確認の部分を分ける
強い口調で質問されると、分かっていないことまで、その場で答えなければならないように感じることがあります。
しかし、記録や前後の勤務者を確認していなければ、答えられないことがあるのは当然です。
まず、自分が説明できる範囲を整理します。
確認できているのは、
- 自分が実際に行ったこと
- 自分が行っていなかったこと
- 自分が見聞きした内容
- 記録に残っている内容
- 現在確認できている利用者の状態
です。
一方で、次のような内容は確認が必要です。
- 前後の勤務者がどこまで対応したか
- 誰から誰へ情報が伝わっていたか
- 記録されていない時間帯に何があったか
- 担当者や確認者が決まっていたか
- 途中で予定や指示が変わっていなかったか
まだ分からないことを、推測で答える必要はありません。
「現時点で確認できているのは、ここまでです」
「その部分はまだ分からないため、記録を確認します」
「私が対応した範囲は説明できますが、その前の経緯は確認が必要です」
と、確認できている範囲を明確にします。
事実と推測を混ぜないことは、責任逃れではなく、正確に報告するために必要なことです。
3.自分の抜けが確認できた部分は認めて謝る
実際に自分の確認不足や業務の抜けがあった場合は、その部分を曖昧にせず認めます。
たとえば、自分が行うべき確認をしていなかったのであれば、
「私が確認できていなかった点については、申し訳ありません」
と伝えます。
そのうえで、
「今から必要な対応を確認します」
「記録と関係職員への共有を行います」
と、次の行動まで続けます。
ここで分けておきたいのは、自分自身の確認不足や業務上の抜けと、その抜けが起きた原因全体です。
自分に確認不足があったとしても、
- 必要な情報を事前に知らされていたか
- 担当が明確になっていたか
- 誰かが確認する仕組みがあったか
- ほかの職員にも分かる手順だったか
は、それとは分けて確認できます。
「私が確認できていなかった点は申し訳ありません。同じことを防ぐために、情報がどこまで共有されていたかも確認したいです」
と伝えても構いません。
自分のミスを認めることと、原因のすべてを一人で背負うことは同じではありません
ミスそのものだけでなく、「なぜ自分だけの責任になっているのか」を整理したい場合は、「介護のミスを自分だけの責任にされたとき|事実と体制を分ける整理法」で、起きた事実・自分の対応・連携・体制の4つに分けて考える方法を整理しています。
4.次に誰が何を確認するのか決める
事実を整理したあとは、次の対応を曖昧なままにしないことが大切です。
- 誰が利用者の状態を確認するのか
- 誰が前後の勤務者へ確認するのか
- 誰が記録を残すのか
- 誰が次の勤務者へ共有するのか
を決めます。
「それでは、私は記録を確認します。利用者の状態は誰が見ますか」
「前の勤務者への確認は、誰が行いますか」
「確認した内容を、次の申し送りで共有する形でよいですか」
と、次の動きを具体的にします。
担当者の名前だけが分かっても、その後の確認や対応が決まらなければ、必要な対応は進みません。
話を「誰が悪かったか」で止めず、「次に誰が何をするか」まで進めます。
5.同じことを防ぐために「どこで止まったか」を確認する
故意や隠蔽が疑われる場合は別として、通常の業務上の抜けでは、一人を責め続けるだけでは再発防止につながりません。
本人の行動を確認すると同時に、同じ状況になったとき、別の職員にも同じことが起こり得ないかを見ます。
その可能性があるなら、本人への注意だけで終わらせず、情報共有や役割分担、確認方法まで見直す必要があります。
事故やヒヤリハットにつながる出来事でも、事実や背景を確認し、職場全体で再発防止へつなげる視点が重要です。
厚生労働省も、介護事故等の報告・分析について、施設全体で情報を共有して再発防止につなげることを目的とし、職員への懲罰を目的とするものではないと示しています。
もちろん、自分の確認不足やミスを認めなくてよいという意味ではありません。自分の確認不足やミスは振り返りつつ、同じことを防ぐために情報共有や役割分担まで確認していくことが大切です。
出典:厚生労働省
「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」
確認するのは、たとえば次のような点です。
- 必要な情報はどこまで伝わっていたか
- 口頭だけでなく、記録にも残っていたか
- 誰が実施し、誰が確認するのか決まっていたか
- 職員によって手順が違っていなかったか
- 次回から確認項目に何を加えるか
申し送りの場では、すべてを詳しく分析できないこともあります。
その場合でも、
「担当者だけでなく、どこで情報が止まったのかも確認したいです」
「次回から、誰が確認するのかも決めておきませんか」
「同じことが起きないように、共有方法も確認したいです」
と伝えることで、話を再発防止へ進めやすくなります。
強く責められたことと、実際の責任範囲は同じではない
「あなたの担当でしょう」
「どうして確認しなかったの?」
と強く言われると、すべて自分が悪かったように感じることがあります。
その場では頭がうまく働かず、必要な説明ができないこともあるでしょう。
しかし、相手の言い方の強さが、責任の大きさを証明するわけではありません。
責任の範囲は、声の大きさや相手の立場で決まるものではありません。
実際に何が起きたのかを確認して整理します。
- 自分が実際に行ったこと
- 自分が行うべきだったこと
- 自分には知らされていなかったこと
- ほかの職員も関わっていたこと
- 手順や担当が曖昧だったこと
強く言われた直後に整理できない場合は、
「いったん記録を確認してから回答します」
と伝えても構いません。
その場で早く終わらせるために、分からないことまで自分の責任として認める必要はありません。
その場では整理しきれず、あとで上司へ相談するために出来事を残したい場合は、「介護職が人間関係の相談前に残したい記録|事実メモの書き方」で、事実・自分への影響・相談したいことを分ける方法を整理しています。
個人への責任追及だけが繰り返される場合
一度の申し送りで、感情的な言い方が出てしまうことはあるかもしれません。
しかし、次のような状態が繰り返される場合は、その場での返し方だけでは解決しにくくなります。
- 記録を確認せず、特定の職員が責められる
- 同じミスが続いても、手順が見直されない
- 管理者も一緒になって犯人を探す
- 人によって責任の追及のされ方が違う
- 原因を確認しようとすると、言い訳として扱われる
- 利用者への対応より、職員への叱責が優先される
このような状態が続く場合は、いつ、何が起き、どのような確認が行われたのかを事実として整理し、リーダーや管理者へ相談する段階です。
職場へ相談する段階になった場合は、「介護職の人間関係を相談するとき|相談相手・伝え方・最初の順番」で、相談相手と伝える内容を整理しています。
まとめ|自分の責任を認めることと、犯人探しで終わらせることは違う
介助や業務の抜けが見つかったとき、担当者や経緯を確認することは必要です。
自分のミスが確認できた部分は、曖昧にせず認めて謝ります。
ただし、まだ分からないことや、情報共有・役割分担まで含めた原因のすべてを、その場で一人で背負う必要はありません。
責任追及に話が傾いたときは、次の順番で整理します
- 利用者への影響と今必要な対応を確認する
- 確認できている事実と未確認の部分を分ける
- 自分の抜けが確認できた部分は認めて謝り、次の対応を伝える
- 次に誰が何を確認するか決める
- 同じことを防ぐために、情報や役割のどこで止まったのかを確認する
次に「担当は誰?」と聞かれたときは、担当者を答えるだけで終わらず、
「確認できているのはここまでです。未確認の点はこれから確認します」
と、事実と次の対応を分けて伝えてみてください。
