介護職員によってやり方・指示が違うとき|基準を一本化する確認方法
「Aさんにはこう教わったのに、Bさんからは違うやり方を言われた」
介護現場では、職員によって細かなやり方が違うことがあります。
経験年数も違えば、これまで働いてきた施設も違います。同じ介助でも、やりやすい手順や声かけの仕方に多少の違いが出ること自体は不自然ではありません。
ただ、教わる側からすると困ります。
「結局、どちらでやればいいのか」
「次に別の人と組んだら、また違うと言われるのではないか」
特に新人や、異動・転職して間もない時期は、その職場の基準そのものがまだ見えていません。
なお、一人の職員から「普通はこうする」と個人のやり方を求められることと、複数の職員から違う指示を受けることは、少し別の問題です。
特定の職員から「普通はこうする」と、その人独自のやり方を求められている場合は、「介護現場で『普通はこうする』と言われたとき|相手ルールと共有された基準を分ける方法」で、相手個人のルールと職場の基準を分ける方法を整理しています。
後者で困ったときは、誰が正しいかを決めようとするより、「この施設・チームでは何を基準にしているのか」を確認するほうが動きやすくなります。
この記事では、人によってやり方が違うときに、個人差でよい部分と共通にしたほうがよい部分を分け、今の勤務で何を基準にすればよいのか確認する方法を整理します。
人によってやり方が違っても、全部を同じにする必要はない
まず覚えておきたいのは、職員によってやり方が違うからといって、すべてを一つに統一する必要はないということです。
介護には、経験の中で身につけた細かな工夫もあります。
同じ目的に向かっていて、安全や利用者対応、記録、チーム連携に支障がなければ、多少やり方が違っていても困らない部分はあります。
そのため、
「AさんとBさんで違う。どちらかが間違っている」
とすぐに考える必要はありません。
一方で、何でも「人それぞれ」で済ませてしまうと、教わる側は勤務する相手によって正解が変わることになります。
大切なのは、やり方が違うこと自体ではなく、その違いが仕事にどんな影響を出しているかを見ることです。
統一したほうがいいのは「チームに影響すること」と「外せない基本」
私自身、スタッフ同士の認識が違うことで、業務がスムーズに進まなくなる場面を経験してきました。
こうした場合は、単なる個人の工夫ではなく、チームとして確認したほうがよい部分だと考えています。
目安になるのは、大きく二つです。
チーム全体の動きに影響が出ている
たとえば、職員によって認識が違うことで、
- 次の職員が何をすればいいのか分からない
- 業務が途中で止まる
- やり直しが発生する
- 「聞いていた内容と違う」という行き違いが起きる
といったことが続く場合です。
細かな好みの違いではなく、違いによってチームの仕事が回りにくくなっているのであれば、一度基準を確認したほうがよいでしょう。
誰が担当しても外せない部分が違っている
もう一つは、誰が担当しても押さえておく必要がある部分です。
たとえば、
- 安全に関わること
- 記録の方法や残す内容
- 利用者ごとに共有されている対応方針
- 職場で決められている手順
などです。
細かな順番や工夫には違いがあっても、こうした部分まで職員ごとに変わってしまうと、教わる側だけでは判断できません。
ここでは、
「全部同じにするか」ではなく、「個人の工夫でよい部分と、チームで共通にする部分を分ける」
と考えると整理しやすくなります。
厚生労働省も、介護現場の業務改善について、同じ業務でも職員によって手順や方法が異なることがあるとして、判断基準や手順を明確にする考え方を示しています。
また、職員を教える場面でも、教える人によって内容や手順がばらばらになれば、教わる側が混乱するため、一貫した仕組みを整えることが重要とされています。
出典:厚生労働省「介護分野における『生産性向上』とは?|手順書の作成」
やり方が食い違ったら、「その職場の基準」を確認する
実際に違うやり方を教わったときは、次の順番で確認してみてください。
1.何について答えが違っているのかを一つに絞る
最初に、
「人によって全部違う」
とまとめないことです。
たとえば、
- 介助方法のどの部分なのか
- 記録のどこなのか
- 申し送りの何が違うのか
- 業務の順番についてなのか
というように、食い違っている点を一つにします。
「AさんとBさんの言うことが違います」だけでは、確認する側も何を判断すればいいのか分かりません。
違いを具体的にしてから聞くほうが、基準を確認しやすくなります。
2.まずはリーダーや主任など、基準を判断できる人に聞く
新人であれば、その日のリーダーや主任など、勤務の中で判断できる立場の人へ確認するのが分かりやすいと思います。
大事なのは、単に「話しやすい人」を探すことではなく、その場で何を基準にするのか判断できる人へつなげることです。
直接聞きにくい場合は、話しやすい先輩に、
「これは誰に確認したらいいですか?」
と聞く形でも構いません。
介護経験が長くても、新しい施設へ入ったばかりであれば同じです。
私も、経験を積んでから別の現場へ入ったときは、自分の経験だけで判断せず、主任やリーダーに当たる人へ確認していました。
介護経験があることと、その施設の基準を知っていることは別です。
前の職場での経験は持ちつつ、今の職場では何を基準にしているのかを確認したほうが、後の行き違いを減らせます。
3.「誰が正しいですか」ではなく「ここではどうしますか」と聞く
確認するときは、AさんとBさんのどちらが正しいのかを聞く形にしないほうが話が進みやすくなります。
私なら、たとえばこう確認します。
「○○さんにはこう教わったのですが、こちらではどう統一していますか?」
この聞き方なら、
「○○さんのやり方が間違っていますよね」
と誰かを否定せずに済みます。
確認したいのは人の優劣ではなく、この施設では何を基準にしているのかです。
人の話から、チームの基準へ焦点を戻すイメージです。
4.まず「今の勤務では何に従うか」を決める
すべての職員のやり方を、その場で完全に統一しようとする必要はありません。
まず必要なのは、
「今、自分は何を基準に動けばいいのか」
を分かる状態にすることです。
「今回はこの方法で進める」
「この部分はこの決まりに合わせる」
と確認できれば、少なくとも「どちらに従っても怒られそう」という状態からは抜け出せます。
チーム全体で改めて共有する必要があるかどうかは、その後に考える問題です。
確認しても基準が決まらないなら、別の問題として考える
一度確認すれば整理できるなら、まずはそれで十分です。
ただし、確認しても毎回違う答えが返ってくる場合は、単なる「やり方の違い」ではなくなってきます。
たとえば、特定の職員だけが共有されていない自分のやり方を強く求めてくるのであれば、複数職員の指示不一致とは分けて考える必要があります。
また、
- 聞くたびに答えが違う
- 決まった内容が共有されない
- 口頭だけで話が変わっていく
といった状態なら、個人の確認だけではなく、情報共有の仕組みの問題かもしれません。
さらに、リーダーや主任へ確認しても基準が決まらず、安全や利用者対応、日々の業務に支障が続いているなら、次は職場への相談として扱う段階です。
基準が決まらない状態が続き、「個人同士の確認で済むのか、管理者に入ってもらうべき問題なのか」と迷う場合は、「介護現場で管理者が介入すべき人間関係の問題|相性との境界線」で、その境界を整理しています。
管理者へ相談すると決めた後の相談相手や伝え方は、「介護職の人間関係を相談するとき|相談相手・伝え方・最初の順番」で整理しています。
まず一つ、「この職場ではどうするか」を確認してみる
介護のやり方には、職員ごとの工夫があってよい部分もあります。
一方で、チームの動きに影響することや、安全・記録・利用者対応などの共通にしておきたい部分までバラバラになっていると、働く側は戸惑います。
そんなとき、AさんとBさんのどちらが正しいのかを決める必要はありません。
今困っていることを一つだけ選び、
「○○さんにはこう教わったのですが、こちらではどう統一していますか?」
と確認してみてください。
まず「この職場ではどうするのか」が分かれば、少なくとも今の勤務で迷わず動くための基準を一つ持てます。
