介護のミスを自分だけの責任にされたとき|事実と体制を分ける整理法
介護の仕事でミスや見落としが起きたあと、
「確認しなかったあなたが悪い」
「普通は分かるでしょう」
と言われることがあります。
実際、自分が確認できていなかったのなら、直すべきところはあります。
だからこそ、
「自分にもミスがあったし、何も言えない」
と思ってしまう人もいるかもしれません。
ただ、ここで分けて考えたいことがあります。
自分の行動に修正点があることと、その出来事の原因や責任をすべて自分一人で背負うことは同じではありません。
ミスが起きたときは、いきなり「誰が悪かったか」を決めるのではなく、自分が直すことと、連携や職場の仕組みとして確認することを分けて考えると、次に何を変えればいいのかが見えやすくなります。
なお、利用者の安全に関わる可能性がある場合は、責任の整理より先に、職場のルールに沿った安全確認や報告を優先してください。
この記事で整理する「責任」は、法的な過失や賠償責任を判断するものではありません。仕事上の振り返りとして、自分が直すことと、連携や職場の体制として確認することを分けるための整理です。
ミスをしたことと「全部自分の責任」は分けて考える
まず、自分の明確なミスまで職場や周囲のせいにする必要はありません。
教わっていた。
確認する場所も分かっていた。
確認できる状況だった。
それでも自分が確認しなかった。
そうであれば、自分のミスとして受け止めて、次に繰り返さない方法を考える必要があります。
私自身も、明確に自分のミスだったと分かれば、そこは反省します。
ただし、
「自分にもミスがあった」
から、
「だから、この出来事は全部自分の責任だった」
まで一気につなげる必要はありません。
たとえば、必要な情報が共有されていなかった。確認方法が職員によって違った。新人が知っている前提になっていた。
こうした条件が重なっていれば、自分の修正点とは別に、次のミスを防ぐために確認した方がいいことがあります。
反省することと、原因を一人に集めることは別です。
責任を考える前に、出来事を4つに分ける
ミスをした直後は、
「私が悪かった」
「いや、職場のやり方にも問題がある」
と、どちらか一方に寄りやすくなります。
そんなときこそ、まず4つに分けてみます。
1.起きた事実
最初に見るのは、「誰が悪いか」ではなく、実際に何が起きたのかです。
たとえば、
- 必要な確認がされていなかった
- 情報が記録されていなかった
- 申し送りが一部伝わっていなかった
- 決められた対応が行われていなかった
といった具合です。
ここでは、
「自分は注意力がない」
「先輩がちゃんと教えてくれなかった」
といった評価は、いったん横に置きます。
まずは、確認できる事実だけを置きます。
2.自分は何をしていたか
次に、自分側を確認します。
その情報を知っていたのか。
確認方法を教わっていたのか。
確認できる状態だったのに、しなかったのか。
分からないことを、そのまま進めてしまわなかったか。
ここに自分の修正点があるなら、そこは残します。
「体制にも問題があったから、自分は何も悪くない」とするための整理ではありません。
大切なのは、次回、自分が変えられることを見つけることです。
3.必要な連携はできていたか
自分の対応を確認したら、次は周囲との連携です。
介護では、一人だけで完結しない仕事が多くあります。
口頭では共有されていたけれど、あとから確認できる記録がなかった。
本来は複数人で共有しておいた方がいい内容が、一人の記憶や伝達に任されていた。
必要な申し送りが、途中で抜けていた。
こうした場合、「最後に確認しなかった人」だけを見ても、同じことがまた起きるかもしれません。
自分が何を確認すべきだったかと同時に、何が共有されていれば防げたのかも見ます。
4.防ぎやすい体制だったか
最後に見るのが、職場の仕組みです。
たとえば、
- 必要なことを事前に教えられていたか
- 記録する場所や確認方法が決まっていたか
- 新人でも基準を知れるようになっていたか
- 職員ごとに説明が違っていなかったか
- 確認するための余裕を持てる状況だったか
といった部分です。
ここまで見ると、
「自分が次から変えること」
と、
「自分一人では変えられないこと」
を分けやすくなります。
厚生労働省の「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」でも、事故報告は職員の責任追及を目的とするのではなく、原因分析や再発防止策の検討を通じてケアの向上につなげることが重視されています。
また、事故の現場は多職種・多部門で検証し、できる限り事実に基づいて原因を分析したうえで、再発防止策は職員個人だけではなく事業所全体で検討する考え方が示されています。
もちろん、すべての仕事上のミスが重大な介護事故と同じという意味ではありません。
ただ、「一人を注意して終わり」ではなく、原因を分けて次に起きにくくするという考え方は、日常のミスを振り返るときにも使えると思います。
「普通は分かる」で終わらせると、次に生かしにくい
私も新人の頃、教わっていないことについて、
「普通は分かる」
というようなことを言われた経験があります。
何についてだったのか、細かな場面まではもう覚えていません。
ただ、当時の私は、
「できない自分が悪いんだ」
と受け止めていたと思います。
新人の頃は、そもそも何を確認すればいいのか、どこまで聞けばいいのかも十分には分かりません。
もちろん、新人なら何をしても仕方ないという意味ではありません。
ミスが起きたなら、
- 本人は何を知っていたのか
- 何を確認していれば防げたのか
- どのくらいの知識があれば防げたのか
- どんな申し送りがあれば防げたのか
まで見た方が、次につながります。
「普通は分かる」で終われば、その人は注意されて終わります。
でも、何が足りなかったのかまで確認できれば、その本人だけでなく、次に入ってくる新人にも同じことが起きにくくなります。
今振り返ると、当時の自分にも覚えることや確認することはあったと思います。
同時に、新人はまだ十分に知らないという前提で、教える側や職場側が考える部分もあったのではないかと思います。
どちらか一方だけの話ではありません。
体制に問題があっても、その場ですべて反論しなくていい
4つに分けた結果、
「自分にも確認不足はあった。でも、共有方法にも問題があった」
と分かることがあります。
では、それを指摘されたその場ですぐ伝えるべきでしょうか。
私は、必ずしもそうは思いません。
相手がこちらの話も聞いてくれそうなら、
「自分の確認不足はありました。その点は次から気をつけます。そのうえで、共有方法も一度確認したいです」
と話せることもあります。
一方で、ミスを指摘された直後に、
「でも教わっていません」
「でも申し送りがありませんでした」
「でも人手が足りませんでした」
と返しても、内容以前に「言い訳をしている」と受け取られることがあります。
体制に問題があったとしても、その場で本人がすべて説明しきる必要はありません。
まず、自分が直すべきところは受け取る。
そのあとで落ち着いて、
- 「何が起きたか」
- 「自分は何をしたか」
- 「何が共有されていたか」
- 「仕組みとして何が足りなかったか」
を整理する。
必要な安全確認や報告を済ませたあとなら、その順番で整理しても遅くありません。
本来は、周囲の職員やリーダー、管理者側も、
「本人が確認しなかったから」
だけで終わらず、
「なぜ確認できなかったのか」
「次はどうすれば防げるのか」
まで拾えるのが理想だと思います。
個人への注意だけでは防ぎにくいケースもある
一度の明確な確認不足で、自分が次から気をつければ防げる。
そう整理できるなら、自分の行動を変えて終えられることもあります。
一方で、
- 同じようなミスが複数の職員に起きている
- どこを確認すればいいのか決まっていない
- 新人への教え方が人によって違う
- 必要な申し送りが個人の記憶に頼っている
- ミスのたびに個人注意だけで終わり、仕組みが変わらない
という状態なら、一人の注意力だけで防ぎ続けるのは難しくなります。
この場合は、
「自分がもっと気をつける」
だけで終わらせず、連携や体制の問題として残しておいた方がいいでしょう。
申し送りの場そのものが「誰のせいか」を探す時間になっている場合は、「介護の申し送りで『担当は誰?』と責任追及が始まったとき|犯人探しを再発防止へ戻す方法」で、個人責めから事実確認と再発防止へ戻す流れを整理しています。
また、整理しても同じ問題が続くなら、事実を残して相談する段階になることもあります。
整理した内容を上司へ相談するためのメモに残したい場合は、「介護職が人間関係の相談前に残したい記録|事実メモの書き方」で、出来事・自分への影響・相談したいことに分ける方法を整理しています。
まずは、今回の出来事が本当に自分一人の修正だけで防げるものだったのかを確認してみてください。

まず一つの出来事を4行に分けてみる
自分だけの責任にされたことが頭に残っているなら、まず紙やスマホのメモに4行だけ書いてみてください。
- 起きた事実: 何が起きたか
- 自分の対応: 自分は何をした・しなかったか
- 連携: 必要な共有や申し送りはどうだったか
- 体制: 教育・記録・確認方法などはどうなっていたか
そのあとで、
「次に自分が直すことは何か」
を一つ決めます。
自分の確認不足が大きかったなら、そこは次に変える。
ただ、それを
「自分は介護職としてダメだ」
という話まで広げる必要はありません。
そして、連携や体制にも問題が残っているなら、それまで自分一人の反省として抱え込まない。
ミスを認めることと、全部を背負うことは別です。
自分が直すところは直す。
職場として確認した方がいいところは、それとは別に残す。
責任を考えるときは、その二つを混ぜないところから始めてみてください。
