介護のミスを引きずるとき|帰宅後の不安を「今確認」と「翌日確認」に分ける方法
仕事が終わって家に帰ってから、
「記録、ちゃんと書いたかな」
「あのこと、報告したっけ」
「ケアを一つ忘れていなかったかな」
と急に気になることがあります。
特に介護職になったばかりのころは、自分の判断にまだ自信がなく、
「もし利用者さんに何かあったらどうしよう」
「こんなミスをする自分は介護に向いていないのでは」
と、そこから考えがどんどん広がってしまうこともあると思います。
そんなときに最初に分けたいのは、今確認した方がいいことなのか、次に職場で確認すればいいことなのかです。
利用者さんの安全に関わる可能性があり、今対応しないことで影響が広がるかもしれないなら、勤務先のルールに沿って確認・報告する。
一方で、次に職場へ行ったときに確認すればよい内容なら、今夜ずっと答えを出そうとする必要はありません。
大切なのは、安全のために必要な確認をすることと、答えの出ない不安を夜まで考え続けることを分けることです。
この記事ではまず、「今確認した方がいいこと」と「次に職場で確認すればいいこと」を分けます。
そのうえで、明日でいい不安は「事実・想像・確認すること」に整理して、今夜できることをはっきりさせていきます。
ミスが不安になったら、まず「今動くこと」と「明日でいいこと」を分ける
できることなら、不安要素は職場にいるうちに確認して、仕事と一緒に置いて帰る。
私はこれが基本だと思っています。
とはいえ、帰宅してから急に「あれは大丈夫だったかな」と思い出すこともあります。
そんなときに最初に考えたいのは、
確認・報告・連絡をしないままにすることで、利用者さんへの影響につながる可能性があるか
です。
厚生労働省のガイドラインでも、事故が起きたときに適切に動けるよう、状況確認や職員間の連携方法、施設内の報告ルートなどをあらかじめ決めておくことが示されています。
帰宅後に気づいたことについても、自分だけで「今すぐ連絡すべきか」を抱え込むのではなく、まず勤務先の報告・連絡ルールに沿って判断することが大切です。
出典:厚生労働省「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」
一方で、
「明日の仕事では、ここを確認してから動いたほうがよさそう」
というような、その日のうちに確認しなくても利用者さんへの影響が考えにくい内容なら、夜に答えを出す必要はありません。
今動く必要があるのか。次に確認できるときでいいのか。
まずはここを分けます。
そして、新人のうちは「どちらなのか分からない」ということもあると思います。
施設や会社によって報告・連絡のルールも違います。迷いやすい場面があるなら、
「こういうことに帰宅後気づいた場合は、どこまで連絡したほうがいいですか?」
と、先輩やリーダー、管理者などに一度確認しておくと、その後の判断もしやすくなります。
頭の中の不安を「事実・想像・確認すること」に分ける
不安が大きくなると、まだ分かっていないことまで、頭の中では一つの出来事のようにつながっていきます。
たとえば、
「記録を書いたか思い出せない」
というところから、
「記録していないかもしれない」
「報告もできていなかったかもしれない」
「何か事故につながるかもしれない」
「自分のせいになるかもしれない」
と広がっていく。
でも、この時点で分かっている事実は、
「記録したかどうかを今は思い出せない」
というところまでかもしれません。
そこで、不安を3つに分けます。
- 事実:今分かっていること
- 想像:まだ起きたとも確認できていないこと
- 確認すること:次に職場で確かめられること
先ほどの例なら、事実は「記録したか思い出せない」。
想像は「記録していないかもしれない」「何か問題になるかもしれない」。
確認することは「次に職場で記録を確認する」。
ここまで分けると、少なくとも今夜できることはかなり少なくなります。
不安の中から、実際に確認できるものだけを取り出す。
それだけでも、頭の中で同じことを何度も考え続ける状態から離れやすくなります。
明日確認することを一つ残したら、それ以上答えを出そうとしなくていい
明日確認すればいい内容なら、メモに一つ残しておきます。
- 「○○さんの記録を確認する」
- 「昨日の申し送り内容を確認する」
- 「この場合の報告方法をリーダーに聞く」
長い反省文を書く必要はありません。
次にやることが分かれば十分です。
ただ、メモに書いたからといって、気持ちまですぐに切り替わるとは限りません。
「分かった。もう考えない」
と簡単にできれば苦労しません。
夜にもやもやする気持ちは分かります。
だから、無理に気持ちまで切り替えようとしなくてもいいと思っています。
「まだ気になるな」
と思っていても構いません。
ただ、
明日確認することは決まっている。
そこまで整理できたなら、今夜これ以上考えても、新しい事実が増えるわけではありません。
気持ちが残っていても、行動だけは明日に預けていい。
「気にしないようにする」よりも、そのくらいの区切りのほうが現実的だと思います。
一度のミスだけで「介護に向いていない」と決めなくていい
新人のころは、ミスをすると必要以上に自分を責めてしまうことがあります。
「こんなこともできない」
「また失敗するかもしれない」
「自分は介護に向いていないのでは」
でも、ミスをしたことと、介護に向いていないことは同じではありません。
最初は誰でも経験が足りません。
実際に仕事をする中で、
「ここは確認しないと危ないんだ」
「こういうときは報告が必要なんだ」
「次からはここを先に見ておこう」
と分かっていくことがあります。
ミスをした経験が、何が大事なのかを覚えるきっかけになることもあります。
だから、一度うまくできなかったことだけで、
「自分はダメだ」
まで広げなくていいと思います。
まだ経験していなかった。まだ慣れていなかった。
それ自体は悪いことではありません。
もちろん、「ミスしても気にしなくていい」という話でもありません。
大切なのは、
次に同じ状況になったら、何を確認するかが一つ増えたか
です。
そこまで持っていけたなら、その経験は次に生かせます。
同じミスが続くなら、自分を責めるだけでは防げないこともある
一度のミスと、同じミスが何度も続いている状態は分けて考えたほうがいいと思います。
同じことが続くなら、
「もっと反省しないと」
「もっと気をつけないと」
だけではなく、
今のやり方で本当に防げるのか
を見る段階です。
確認手順や情報共有の方法など、個人の注意だけでは防ぎにくい部分があるなら、仕事の仕組みも含めて見直す必要があります。
ここまでくると、帰宅後の不安整理とは別の問題です。
「全部自分の責任かもしれない」まで広がったら、責任の範囲を分ける
ミスをした後、
「もっと自分が気をつけていれば」
と振り返ること自体は悪いことではありません。
ただ、そこから、
「何かあったら全部自分の責任だ」
「利用者さんに起きることは全部自分が防がないといけない」
まで広がってしまったら、ミスとは別に責任の範囲を整理する必要があります。
厚生労働省の事故報告でも、原因は「本人要因・職員要因・環境要因」などに分けて分析する形になっています。ミスが起きたときも、職員一人の注意不足だけで終わらせず、ほかに見直せる要因がなかったかを考えることが再発防止につながります。
自分が確認・改善できることは振り返る。
でも、起きたことのすべてを自分一人の責任として抱え込まない。
「自分はどこまで責任を持てばいいのか」という悩みが強くなってきたら、帰宅後の不安とは分けて整理したほうがいいでしょう。
ミスについて「自分にも直すところはあるけれど、本当に全部自分の責任なのだろうか」と感じている場合は、「介護のミスを自分だけの責任にされたとき|事実と体制を分ける整理法」で、出来事を「事実・自分の対応・連携・体制」に分けて整理しています。
また、ミスに限らず毎日の仕事が家に帰っても頭から離れず、一人反省会が続いている場合は、「介護の仕事が頭から離れないとき|一人反省会を終える整理手順」で、仕事全般を引きずるときの整理方法をまとめています。
まとめ|ミスを「自分を責める材料」ではなく「次に確認すること」に変える
ミスや見落としが気になったとき、最初から「気にしないようにしよう」とする必要はありません。
まず、
今対応しないことで、利用者さんへの影響につながる可能性があるのか。
そこを確認します。
- 今動く必要がある → 勤務先のルールに沿って確認・報告する
- 次回確認でよい → 「次に○○を確認する」と一つだけ残す
それでも、もやもやする夜はあると思います。
無理に気持ちまで切り替えなくてもいい。
ただ、明日することが決まったなら、今夜ずっと自分を責め続けなくてもいいと思います。
新人なら、まだ知らないことや経験していないことがあります。
一度のミスだけで「介護に向いていない」と決める必要はありません。
同じことを繰り返さないために、次に確認することが一つ増えた。
まずは、そのくらいでいいのではないでしょうか。
