新人介護職が質問できない・教えてもらえないとき|安全を守る確認の順番
分からないことがあっても、先輩が忙しそうだったり、質問すると嫌な顔をされたりすると、声をかけるのをためらってしまいます。
「こんなことも分からないのかと思われそう」
「まず自分で考えてと言われるかもしれない」
「もう少し様子を見てからでもいいのではないか」
そう考えているうちに、分からないまま介助を進めそうになることもあるでしょう。
もちろん、記録やマニュアルを確認すれば分かることまで、すべて人に聞く必要はありません。時間に余裕があり、自分で調べられる内容なら、先に確認した方が仕事を覚えやすくなります。
一方で、利用者の安全に関わることや、自分では判断できないことまで抱え込む必要はありません。
結論から言えば、確認の順番は次のように考えます。
- 安全に関わる場合はいったん止める
- 時間があり、資料で分かることは確認する
- 分からない部分を、判断できる人に聞く
- 答えてもらえない場合は、別の確認先へつなぐ
大切なのは、何でもすぐに質問することでも、すべて自分で解決することでもありません。
自分で確認できる範囲と、人に確認すべき範囲を分けることです。
この記事では、質問しづらい環境でも安全確認を止めないために、何を調べ、どの段階で誰に聞けばよいのかを整理します。
安全を守るための確認は4つの順番で考える
質問できないときは、「聞くべきか、もう少し考えるべきか」と悩み続けるより、順番を決めておくと動きやすくなります。
1.安全に関わる場合はいったん止める
利用者の安全に関わることで、自分だけでは判断できない場合は、いったん介助を止めて確認します。
移乗、食事、排泄、入浴など特定の介助だけではありません。
- その利用者に合った介助方法が分からない
- 普段と様子が違う
- 聞いていた方法と実際の状況が違う
- 間違った対応をする可能性がある
- 自分の判断に確信が持てない
このような場面では、質問の仕方を整えることより、分からないまま進めないことを優先します。
私も、利用者の安全に関わり、自分では判断できない場面では、確認を優先してきました。
その場では、
「安全に関わるため、いったん確認させてください」
「普段と様子が違うため、確認をお願いします」
と短く伝えて構いません。
確認することは、誤った対応を防ぐだけでなく、自分一人で判断や責任を抱え込まないためにも必要です。
2.時間があり、資料で分かることは確認する
緊急性がなく、記録やマニュアルを見れば分かる内容であれば、先に自分で確認します。
確認できるものには、次のようなものがあります。
- 申し送り
- 介護記録
- 利用者ごとの対応方法
- 業務マニュアル
- 手順書
- 当日の予定や連絡事項
たとえば、利用者の普段の介助方法や当日の予定は、記録を見れば分かることがあります。
記録を探す場所や確認する順番が分かるようになれば、自分で判断できる場面も少しずつ増えていきます。
ただし、記録に書かれていないことや、記録を読んでも判断できないことまで、調べ続ける必要はありません。
3.確認したことと分からないことを分けて聞く
資料を確認しても分からない場合は、判断できる人へ質問します。
質問するときは、次の3つを整理します。
- 自分で何を確認したか
- どこまで分かったか
- 何を判断してほしいか
たとえば、次のように伝えます。
「記録を確認しましたが、今日の移乗方法が分かりませんでした。普段はどの方法で対応していますか」
「ここまでは確認しましたが、このまま続けてよいか判断できません。確認をお願いします」
「いつもと様子が違うため、自分だけでは判断せず確認したいです」
単に「分かりません」と伝えるより、自分が確認した範囲と、まだ判断できない部分を分けた方が、相手も答えやすくなります。
ただし、緊急性がある場合は、状況を完璧に説明する必要はありません。
「安全に関わるため、確認をお願いします」
と短く伝え、介助を止めることを優先します。
4.答えてもらえない場合は別の確認先へつなぐ
質問しても答えてもらえない場合や、回答が曖昧な場合は、その人とのやり取りだけで終わらせません。
別の職員や、その日のリーダーなど、判断できる人へ確認します。
質問した相手が忙しかっただけなら、時間や相手を変えることで確認できる場合もあります。
大切なのは、一人の先輩に答えてもらえなかったことを理由に、分からないまま進めないことです。
「自分で考えて」と言われたときの確認方法
質問したときに、「まず自分で考えて」と言われることがあります。
自分で考えるよう促されること自体が、必ずしも問題というわけではありません。
記録を確認したり、自分なりの考えを持ったりすることで、仕事を覚えやすくなることもあります。毎回答えだけを教えてもらうより、自分で調べる習慣がついた方が、一人で対応できる範囲は増えていきます。
ただし、考えても分からないことまで、分かったふりをして進める必要はありません。
次の順番で対応します。
- 記録や手順書を確認する
- 自分なりの考えを整理する
- 判断できない部分を伝える
- 必要なら別の職員へ確認する
再度質問するときは、次のように伝えられます。
「記録を見て、私はこの対応だと考えました。ただ、この部分に自信がないので確認させてください」
「自分でも考えてみましたが、安全に関わるため最終確認をお願いします」
自分で考えることと、確認せずに自己判断することは別です。
調べたうえで判断できなければ、確認するところまでが仕事です。
誰に聞けばよいか分からないときの優先順位
質問する相手は、単に一番近くにいる人ではなく、その内容を判断できる人から考えます。
職場によって役職や体制は異なりますが、確認先の目安としては次のように考えられます。
- その利用者や業務をよく知っている職員
- その日のリーダーや担当者
- 主任など、現場の判断を統一できる人
- 内容に応じて看護職や管理者
利用者の普段の様子や介助方法を知りたい場合は、その利用者をよく担当している職員へ聞くと分かりやすいでしょう。
一方で、対応方法を職場として統一する必要がある場合や、回答が人によって違う場合は、リーダーや主任など、基準を判断できる人へ確認します。
新人の段階では、二人の先輩から違う回答を受けても、どちらが正しいのかを自分の知識だけで判断することは難しいものです。
その場合は、自分で答えを選ばず、次のように確認します。
「別の方法も聞いたのですが、今回はどちらを基準にすればよいでしょうか」
回答の違いを相手への批判として伝えるのではなく、自分が従う基準を確認することが目的です。
話しやすい人を確認の入口にしてもよい
質問のしやすさは、新人本人の性格だけで決まるものではありません。
新人のうちは、普段から気にかけてくれる人がいると、質問もしやすくなります。
反対に、質問するたびに嫌な顔をされたり、強い口調で返されたりすると、必要な確認までためらいやすくなります。
特定の先輩の強い口調が怖く、声をかけること自体に萎縮してしまう場合は、「介護職で先輩が怖い|強い口調に萎縮したときの短い返し方と距離の取り方」で、その場の返し方と距離の取り方を整理しています。
すぐ近くに質問しやすい職員がいなくても、緊急性が低い内容なら、あとで話しやすい職員に確認先を相談する方法もあります。
「この内容は誰に確認すればよいですか」
「この対応について、最終的には誰の判断を確認すればよいでしょうか」
答えそのものではなく、確認する相手を聞くだけでも構いません。
ただし、話しやすい人の意見をそのまま最終決定にするのではなく、必要に応じてリーダーや主任など、判断できる人へつなげます。
話しやすい人は、答えを決めてもらう相手ではなく、適切な確認先へ進むための入口にもなります。
確認しても教えてもらえない状態が続く場合
一度十分な説明を受けられなかっただけなら、時間を置いて聞き直すか、別の職員へ確認する方法もあります。
しかし、次のような状態が繰り返される場合は、個人の質問の仕方だけでは解決しにくくなります。
- 安全に関わる質問にも答えてもらえない
- 誰に聞いても回答が曖昧
- 質問したこと自体を責められる
- 新人が判断できないまま業務を任される
- 職員ごとに回答が違い、基準を確認できない
この場合は、「質問が苦手な自分の問題」として抱え込まず、主任や管理者などへ相談する段階です。
職場へ相談する段階になった場合は、「介護職の人間関係を相談するとき|相談相手・伝え方・最初の順番」で、誰に何を伝えるかを整理しています。
特定の先輩に聞きにくい場合と、職場全体の確認経路が機能していない場合では、必要な対応が異なります。
聞き方を工夫すれば確認できる状態なのか。それとも、誰に聞いても基準が分からない状態なのか。
後者であれば、新人一人の努力だけで解決する問題ではありません。
質問や確認がしにくい状態が続く場合は、新人本人の聞き方だけでなく、職場の教育体制も確認する必要があります。
厚生労働省も、介護現場のOJTについて、指導する職員側が「教えること」を学ぶ重要性を示しています。教育担当者によって教え方にばらつきがあると、事業所全体で業務手順やケアの質を一定に保つことが難しくなるとしています。
出典:厚生労働省「介護分野における『生産性向上』とは?|OJTの仕組みづくり」
質問できないことを能力不足と決めつけない
質問できないまま自己判断で進めると、その場では何事もなく終わることもあります。
しかし、
「本当にあの対応でよかったのか」
「あとから注意されるのではないか」
「次も同じ場面になったらどうしよう」
と、不安が残りやすくなります。
これを繰り返すと、介助そのものより、周囲の反応や失敗への恐怖に気を取られやすくなります。
新人であれば、分からないことがあるのは自然です。
分からないことを質問したからといって、自分の能力が不足していると考える必要はありません。
何も調べずにすべて人へ任せるのではなく、自分で確認できることは確認する。それでも判断できないことは、適切な人へつなぐ。
それも、介護職に必要な判断の一つです。
まとめ|止める・調べる・聞く・つなぐ
分からないことが出たら、最初に次の二つを確認します。
- 利用者の安全に関わるか
- 自分だけで判断できるか
安全に関わり、自分では判断できない場合は、分からないまま進めません。
「安全に関わるため、確認させてください」
と伝え、いったん介助を止めます。
緊急性がなく、記録やマニュアルで確認できる内容なら、先に資料を確認します。
それでも分からない場合は、
- 自分で確認したこと
- 分かったこと
- 判断できないこと
を分けて、適切な相手へ質問します。
答えてもらえない場合は、一人の先輩とのやり取りだけで終わらせず、リーダーや主任など、別の確認先へつなぎます。
止める、調べる、聞く、つなぐ。
この順番を持っておくことが、利用者の安全と自分自身を守る確認の仕方です。
